研究実績の概要 |
平成29年度は申請者が約11ヶ月フランスに滞在し,共同研究を進めた.当初予定通り,様々な熱電材料(Bi, Sb, PbTe, SnSe, SrTiO3等)について共同研究を行なった.(1)Biにおける磁気抵抗とバレー自由度に関するこれまでの研究を統一的視点から整理し,総説論文としてまとめ,投稿した. (2)Sbの磁気抵抗を測定し,全ての半金属の中で最大の磁気抵抗値を見出した.磁気抵抗の磁場方向依存性は3バレー模型によりある程度定量的に説明できることを示した.一方,詳細なバンド計算に基づけば,Sbのフェルミ面はむしろ3つのバレーが連結している可能性が高いことが分かった. (3)IV-VI族半導体(PbTe, PbSe, SnTe, SnSe)の詳細な電子構造を第一原理計算およびLCAO計算により明らかにした.またそれらの圧力依存性についても調べ,それによる熱電性能向上の可能性を議論した. (4)SrTiO3で実験的に観測されている,単一キャリアによる磁気抵抗を理論的に研究した.予備的計算によると,単一キャリア模型においても観測されている磁気抵抗及びその温度依存性を定量的に説明できることが明らかになってきた. (5)Bi単原子膜作成時に現れるパターン形成について,非線形物理および弾性理論に基づいてその起源を調べた.数値シミュレーションにより,実験的に得られているパターンを再現することに成功した. 滞在グループとの共同研究を進めるだけでなく,国際的研究ネットワークを構築するため,次の活動も行なった.(6)日仏の新進気鋭若手研究者を招待し,国際ワークショップ “Spin-Orbit Interaction and G-factor (SOIG2017)”を主催した.日本:9名,フランス:13名が参加し,最新の研究について報告し,討論を行った.
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