研究実績の概要 |
平成30年度は,前年度フランスに滞在して行った様々な熱電材料(Bi, Sb, PbTe, SnSe, SrTiO3等)についての研究を推し進め,その仕上げを行った. (1)フランス研究グループとの8年間にわたる共同研究の総括もかねて,Biの磁気抵抗とバレー分極に関する招待総説論文を出版した. (2)Sbにおいて過去最高の磁気抵抗を達成し,さらに易動度の磁場依存性を明らかにしたことに関する論文を出版した.Sbのフェルミ面が非常に複雑な形状であることをバンド計算によって見出した.それを実験的に検証するため,磁気抵抗の磁場方向依存性を数値シミュレーションにより求めた. (3)これまでフェルミ面が楕円体の場合にしか適用できなかった磁気抵抗の公式を,磁場の行列表現を用いることで,任意の形状を持つフェルミ面に対しても適用できるよう拡張した.得られた新しい公式を用いて,従来理論では決して磁気抵抗がでないとされていた,単一の閉じたフェルミ面でも,球面からのわずかなずれさえあれば磁気抵抗がでることを明らかにした.この理論を用いて,これまで謎とされてきたSrTiO3の磁気抵抗を定量的に説明した. (4)日仏間の国際ネットワークを構築するため,前年度にフランスで日仏合同ワークショップを開催した.今年度は,そのフォローアップ研究会を日本で開催し,日本側参加者のネットワーク構築に努めた.さらに,日仏ネットワークをより発展させるために,新たな日仏ワークショップ(2019年5月開催)を計画し,その準備を行った.
|