研究実績の概要 |
本研究は2つの価数状態を取りうる希土類元素を含むf電子系-重い電子系化合物において理論的に提唱されている「価数揺らぎ」を媒介とした新しい型の超伝導について,研究代表者らが発見したCePtSi2の圧力誘起超伝導を基に,新規物質探索から物性測定を行い, 価数揺らぎによる新規超伝導および新規電子状態の探索, そしてその発現機構の詳細と普遍性を明らかにすることを目的としている。カレル大学物理数学部(プラハ, チェコ共和国)の強相関電子系グループに約6ヶ月滞在し, フラックス法の改良やブリッジマン法により物質探索および純良化を試みた。得られた試料に対して極限環境下における物性測定を行った。 今年度の主な成果を以下に要約する。 (1)2つのCeの結晶学的サイトを持つCePtGe2の純良単結晶育成を試みた。様々なフラックスを試みPbが最適であることを明らかにした。得られた試料に対して磁化,比熱,電気抵抗測定を行い,強い磁気異方性を示すことを明らかにした。また,その後の解析から,2サイトの存在がCePtGe2の諸物性に影響を与えていることを明らかにした。 (2)低温で二段階の相転移を示すSmPtSi2は,フラックス法で単結晶試料が得られるものの,非常に小さくまた磁気モーメントも弱いため,磁気的な情報が得られていなかった。試料の大型化のため,フラックス法やブリッジマン法を試みたが,試料の大型化が困難であることが明らかになった。測定系に改良を加え微小試料を用いた測定を行った結果,反強磁性的な応答を観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年4月から10月まで,カレル大学物理数学部(プラハ, チェコ共和国)の強相関電子系グループに滞在し,試料作成および物性測定を行った。主に2つのCeの結晶学的サイトを持つCePtGe2および2段階の相転移を示すSmPtSi2に集中して試料作成を行ったが,当初は試料の大型化,純良化が難航した。しかしながら,CePtGe2に関しては最適な作成条件を明らかにし,物性測定を行った。一方, SmPtSi2に関しては大型化はできなかった。そのため微小試料での測定を行った。結果としてどちらの試料に関しても物性測定を行った。ゼーベック係数や圧力物性測定を近日中に論文としてまとめる予定である。
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