今年度は,これまで得られた成果の発表,出版に注力した.学会・研究会に参加して成果を発表し,論文も誌筆・投稿・出版した.特に,ブラウンシュバイク工科大学滞在の後半に行った実験についての解析に精力的に取り組み,微小重力環境での粉体衝突の物理則を明らかにすることに成功した.具体的には,ミクロンサイズの微小粒子で構成されるダスト粉体と稠密固体粒子群による粉体であるガラスビーズ集団に固体弾を(微小重力・真空環境下で)衝突させ,ターゲット粉体が膨張する様子の定量的解析を行った.解析の結果,ターゲット粉体の膨張速度は主に衝突エネルギーによりスケールさせることが分かった.また,この衝突エネルギーに立脚した膨張速度のスケーリング則は,ダスト粉体,ガラスビーズ集団のいずれにも同様に適用可能であり,構成粒子の硬さ(柔らかさ)に依存しない普遍的なものであることも分かった.また,彗星地形を構成する粒子も付着性の高い粉体とみなせることについて様々な議論を行い,本共同研究とは別のプロジェクトとして行っていた付着性粉体層内のトンネルの安定性実験が彗星地形と関係することも議論の中で明らかになった.具体的には彗星表面に見られる地盤沈下のような陥没地形のサイズが付着性粉体層内部の空洞の崩壊サイズに対応する可能性が分かった.また,マクロ粉体の重力流における障害物の効果など,その他の様々な系についても継続的に議論を重ね,多くの研究におけるヒントを得ることに成功した.本年度は共同研究先を訪問することはなかったが,電子メール等で議論を繰り返し,研究の仕上げに努めた.学会・研究会での発表や論文出版に対しても概ね好評をえており,本国際共同研究の当初目標はほぼ達成された(もしくは予想以上の成果を得うることに成功した)と考えている.
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