研究課題/領域番号 |
15KK0160
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笠原 成 京都大学, 理学研究科, 助教 (10425556)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2019
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キーワード | BCS-BECクロスオーバー / 超シャロウバンド / 低温高磁場相 / 新奇超伝導相 / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本研究では、超シャロウバンドを有する鉄系超伝導体FeSeに焦点をあて、極低温・高磁場中での熱輸送測定を中心として、この系の量子凝縮状態の特異性の解明を行う。これにより、代表者が取り組んできた基盤研究(B)「超シャロウバンド物質における新奇電子状態と量子凝縮相」の進展に大きな拍車をかけることを目的としている。 FeSeにおける超伝導では、二次元鉄平面に平行に磁場を印加した際、極低温において上部臨界磁場が異常な増加を示すことが見出されている。対破壊効果はパウリ対破壊効果が支配的であると考えられ、また、本物質は非常に小さな有効フェルミエネルギーと大きな超伝導ギャップに起因した大きなMakiパラメータを有することから、極低温・高磁場においてFulde-Ferrel-Larkin-Ovchinnikov (FFLO)状態などの新奇量子凝縮状態が実現している可能性が期待される。当該年度では、平成30年10月から欧州強磁場機構の一つであるナイメーヘン強磁場研究所において、FeSeの面平行磁場下での熱伝導率測定および電子輸送測定に取り組み、30テスラ、1.6ケルビンまでの低温高磁場領域での熱伝導測定を可能とした。実験の結果、2ケルビン以下の低温において、電気抵抗、及び熱伝導の両者から上部臨界磁場の異常な上昇が確認され、更に注目すべき点として、この温度域では上部臨界磁場において、熱伝導の磁場依存性に明瞭な跳びが現れることが確認された。これは超伝導状態から常伝導状態への相転移が一次相転移となっていることを示している。現在までのところ、装置の問題が発生したことによりヘリウム3温度域での測定には至っていない。今後、より低温での測定を実現し、より明瞭な一次相転移の観測と、超伝導相内部でのより微細な異常の検証に臨みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究において、30テスラ、1.6ケルビンという未踏の強磁場低温領域での熱伝導測定が実現した。FeSeの面平行上部臨界磁場における一次相転移の発見は重要な知見であり、この点において本研究は順調であると言える。一方で、実験においてヘリウム3冷凍機に低温リークが発生するトラブルが生じた。この為、より極低温の測定には支障が生じた。また、ナイメーヘン強磁場研究所での強磁場熱輸送測定は、ドレスデン強磁場研究所の共同研究者の1人であるArsenijevic博士と共に進めていたが、同氏が退職することとなり、当初の渡航先であるドレスデン強磁場研究所には強磁場熱輸送測定に精通する研究者がいなくなってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
Arsenijevic博士の退職を受け、同氏の前上司であり、強磁場測定の第一人者であるナイメーヘン強磁場研究所のHussey教授と強磁場熱輸送測定の共同研究を進める。ナイメーヘン強磁場研究所はドレスデン強磁場研究所とともに欧州強磁場研究機構の一つであり、Arsenijevic博士とともに同研究所での実験を以前より計画していた。同研究所での共同研究実施については既に調整済みであり、実質的には実験も既にスタートしていることから、研究目的達成に支障はない。
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