研究課題
本研究では、超シャロウバンドを有する鉄系超伝導体FeSeに焦点をあて、極低温・高磁場中での熱輸送測定を中心として、この系の量子凝縮状態の特異性の解明を行う。これにより、代表者が取り組んできた基盤研究(B)「超シャロウバンド物質における新奇電子状態と量子凝縮相」の進展に大きな拍車をかけることを目的としている。FeSeにおける超伝導では、二次元鉄平面に平行に磁場を印加した際、極低温において上部臨界磁場が異常な増加を示すことが見出されている。対破壊効果はパウリ対破壊効果が支配的であると考えられ、また、本物質は非常に小さな有効フェルミエネルギーと大きな超伝導ギャップに起因した大きなMakiパラメータを有することから、極低温・高磁場においてFulde-Ferrel-Larkin-Ovchinnikov (FFLO)状態などの新奇量子凝縮状態が実現している可能性が期待される。最終年度である本年度は、欧州強磁場機構の一つであるナイメーヘン強磁場研究所において、これまで不可能であったヘリウム3温度域における35テスラまでの熱伝導測定が可能なシステムの構築に成功するとともに、これによってFeSeの面平行磁場下での熱伝導率測定および電子輸送測定に取り組み、極低温・高磁場において一次相転移によって隔てられた新たな超伝導状態が実現していることを見出すことに成功した。これはこの物質においてFFLO超伝導が実現していることを強く示唆する結果である。FeSeにおいては軌道選択的な電子対形成が生じていると考えられており、FFLO状態においても、軌道選択的な対形成が実現していると考えられる。今後、この物質のFFLO状態において対形成をもたらす波数ベクトルを解明することが重要になると考えられる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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