研究課題/領域番号 |
15KK0170
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
橋本 善孝 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (40346698)
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研究期間 (年度) |
2015 – 2018
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キーワード | 古応力サイズ / 海洋付加体 / 国際海洋掘削計画 / 南海トラフ / 地震サイクル / 小断層 |
研究実績の概要 |
海洋付加体浅部(<1000m)の古応力方位と古応力サイズの推定が本研究の目的である。対象地域は紀伊半島沖南海トラフ海洋付加体であり、国際海洋掘削計画で得られたコア試料からのデータを用いる。一昨年度にドイツ・GEOMARに1年間滞在し、海洋付加体浅部堆積物の3軸圧密実験を行った。この結果を元に、堆積物のクリティカルステートにおける破壊強度を整理した。また、古応力方位と応力比を、コア試料に見られた小断層データを用いて小断層解析から推定した。この堆積物の破壊強度と古応力データを組み合わせ、ストレスポリゴン内に制約された古応力サイズが得られた。その結果、逆断層および横ずれ断層ではより大きな古応力サイズが、正断層ではより小さな応力サイズが推定された。この結果は陸上付加体で見られた逆断層および正断層における古応力サイズの変化と同様のものであった。この古応力の変化は、デコルマの摩擦に起因する水平テクトニック応力が減少した結果、重力による垂直荷重が最大主応力に転換したためと考えられる。このような水平テクトニックストレスの減少は、地震によるデコルマでの応力降下に伴うものである可能性が一つ挙げられる。一方、付加体浅部においては、付加体の成長に伴うデコルマからの距離の増加が水平テクトニックストレスの減少を引き起こす可能性も考えられる。この場合、付加体先端部の逆断層場から前孤海盆形成の正断層場への堆積物の設置と解釈できる。高い古地温勾配や小さい過圧密状態などのこれまでのデータからこの解釈は棄却できない。 ここまでの結果と解釈について英語論文を執筆し、国際ジャーナルに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である海洋付加体浅部の古応力の方位と古応力サイズの推定に成功し、陸上付加体に見られる深部デコルマとの対比を行うことが可能となった。海洋付加体浅部においても本手法が有効であることが明らかとなり、さらに対象地域を広げて同様の検証を行って行く必要性が明示された。また、この応力方位および応力サイズの変化は、地震サイクルに伴うものとする解釈と同時に、付加体発達によるものとの解釈も可能であり、過去のデータも後者の可能性を棄却できないといった議論を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
海洋付加体浅部においても陸上付加体と同様の古応力サイズの変化が見られたが、この変化が地震サイクルによるものか、あるいは付加体発達に伴うものか、という議論が残った。このどちらの解釈がよりもっともらしいかをより深く検討して行く必要がある。これは、ドイツの共同研究者とも論文作成にあたって議論して行く中で今後の課題として共通認識を得ているところである。 また、本手法が海洋付加体浅部にも有効であることが明らかとなったことから、新たに得られた室戸沖南海トラフ付加体のフロンタルスラスト付近デコルマ周辺の小断層スリップデータにも適用しようとする。すでにデータは共同研究者と共有済みであり、研究打ち合わせをおこなっているところである。
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