研究課題/領域番号 |
15KK0172
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
村田 次郎 立教大学, 理学部, 教授 (50360649)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2018
|
キーワード | 時間反転対称性 / ベータ崩壊 / ローレンツ不変性 |
研究実績の概要 |
本研究は、原子核のベータ崩壊の精密観測による時間反転対称性の破れ探索の実験研究を、TRIUMF研究所の実験課題として推進すると共に、国際共同研究としての基盤を構築し、今後の発展を目指すものである。具体的には、スピン偏極したLi-8原子核をTRIUMF研究所の加速器施設を用いて大量に生成し、これを停止させてベータ崩壊を観測する。放出されたベータ線の横偏極度をMott散乱の左右非対称性を観測する事で測定する。その為、円筒型ドリフトチェンバーを用いた飛跡検出器を用いる。 本研究では、これまでの準備研究で構築された実験装置を実際に使用し、TRIUMF研究所にて国際共同研究として本番のデータ収集を行った。平成28年度は、これに加え、長期の国際研究として初めて実現可能な、長期間測定によって殆ど未検証の弱い相互作用におけるローレンツ不変性の検証も行った。更に、太陽ニュートリノ起源の新現象の探索もデータ収集を行い、これらのデータは現在、解析中である。 時間反転対称性、ローレンツ不変性、太陽ニュートリノ起源の現象という上記の三つの研究は、国際共同研究としてこれまでの準備研究を大きく発展させる形で実施が実現された。TRIUMF研究所は低エネルギー原子核実験による、標準模型の検証という研究テーマを進める研究者が多く在籍しており、TRIUMF研究所内外において国際的に注目される研究を多数、展開している。本研究は、かような環境下で研究活動を進めることで当初の目標に収まらない分野の成果をあげつつある。 本研究は現在も続行しており、平成29年度には最終的なデータ収集を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、基課題で推進するMTV実験を、国際共同研究チームを構築し、今後の発展の基礎とする事、そして、長期間TRIUMF研究所に滞在してこの分野の研究組織を形成し、一つの目標として未検証の弱い相互作用におけるローレンツ不変性の検証を行うことを目標としていた。実際の進捗状況は、これらに加えて、ローレンツ不変性に関しては複数の研究手法を考案、実現するに至り、さらに太陽ニュートリノ起源の新現象探索という、全く新しい分野を開拓する事が出来た。これらは国際共同研究を行うことで初めて得られた成果であり、順調に進展していると自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度には順調に一部のデータ収集を行い、現在、得られた大量のデータ解析を進めている。その中で、実験の最終的な精度を決定づける、統計誤差と系統誤差の理解が非常に進んだため、その知見を活かして最終的なデータ収集を平成29年度に行う予定である。また、ローレンツ不変性の検証に関しては長期間の観測が必要であり、これらは数か月というスケールで現在も観測を続行している。TRIUMF研究所に長期間渡航しての研究は平成29年度で完了し、以降はデータ解析、成果発表を行う予定である。
|