研究課題/領域番号 |
15KK0173
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
固武 慶 福岡大学, 理学部, 准教授 (20435506)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2017
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キーワード | 超新星 / ニュートリノ輻射輸送 / スーパーコンピューティング / 核密度状態方程式 / ニュートリノ反応率 / 一般相対論 / 中性子星 / ニュートリノ放射 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、当該分野をリードするマックスプランク研究所を中心とする超新星グループと国際共同研究を開始することで、相互の結果を詳細に比較することを第一の目的とし、更に3D超新星モデルにおける爆発エネルギーが観測から必要とされる量に比べおよそ一桁程度足りない問題を、国際共同研究で解決に導くことを目指すものである。この目的を果たすべく、当初の研究計画書に従って、当該年度は以下の成果を得た。 (1)同じ初期条件(20太陽質量の親星)、同じニュートリノ素過程を用いた球対称(1D)のシミュレーションを行い(ポストニュートン近似)、非常に詳細な結果の比較・検討を行った。日・独のグループに加え、ストックホルム大学、プリンストン大学の超新星チームもこの比較プロジェクトに加わり、夏を目処に論文投稿の予定である。本結果によって、超新星計算におけるベンチマーク的なテスト計算の結果を公開し、さらにニュートリノ反応率の公開を計画している。 (2)ニュートリノ反応率については、マックスプランク研究所の研究グループと共同研究が進んでおり、ニュートリノ間の散乱、ニュートリノ吸収反応における核子の多体効果、最新の原子核理論に基づく原子核への電子捕獲率、ニュートリノ制動放射における多体効果など、これまで日本側の超新星コードで簡単化されていたパートを既に世界最高水準のニュートリノ反応率に更新を済ませ、現在球対称計算でチェックを行っており、終了次第、多次元計算に取り組もうとしている研究段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のそれぞれ課題(1),(2)に関して順調に進展していると判断した理由を述べたい。 (1)当初は、日本とドイツ間を中心に国際共同研究を計画していたが、その他の超新星グループ(プリンストン大学、ストックホルム大学)が加わったことで、より広範囲な国際共同研究が進展しつつある。もちろんこれは当初の予想を超えるうれしい展開である反面、グループが増えたことによって、論文の執筆に当たり、成果をどのようにまとめるかなどについて多くの意見が交わされるようになり、当初よりもこの1Dパート(球対称計算)での比較に時間がかかっている。各グループの結果を比べたとき、おおむね一致しているため、速やかにこのパートを完成させ、多次元計算での比較に進んでいきたい。 (2)ニュートリノ反応率について、ブロツワフ大学の研究者とも共同研究を進めることで、当初よりも早くニュートリノ反応率のアップデートを行うことが出来た。同じ状態方程式を用いて、密度、組成、温度を固定したとしても、微妙な状態方程式テーブルの補間の精度で数パーセント程度の反応率の違いが出ることも突き止めることが出来た。細かい点になるが、状態方程式の定義によって化学ポテンシャルに核子の有効質量の入り方が異なっていることがあり、それも反応率の厳密な比較をするのを困難にしてきたことも分かった。これらのことは、両者のコードを一行一行詳細に比較することで分かったことで、従来の我々のニュートリノ反応率の正しさを確かめられたうえで、新しい反応についても我々のコードに取り込むことが出来たのが、大きな成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の課題(1),(2)についてそれぞれの研究方策を考えている。 (1)各超新星グループの国際共同研究の次のテーマは、2次元軸対称(2D)計算での相互比較である。ここではそれぞれのコードごとに、球座標、円筒座標、固定メッシュ適合法(FMR), 最適メッシュ適合法(AMR)など様々な座標系・工夫が取られていることから、相互の結果の定量的な比較・解釈には本国際共同研究が本質的な役割を果たすことは間違いない。特に失速しつつあるショック背面での対流の強さが、ショックが止まる最大半径を決定すると睨んでいる。これがその後のニュートリノ加熱爆発の成否に支配的な役割を果たすことから、メッシュ数依存性を含め、このフェイズに焦点を当てて詳細な比較を行う計画である。尚、この2D計算も今後の3D計算の比較を行う際のベンチマークを与えるもので、非常に重要なステップで欠かすことが出来ない。申請者がリーダーシップを取りながら、このプロジェクトも進めていきたい。 (2)まず、「研究業績の概要」で述べた新しい(これまで考慮されてこなかった)ニュートリノ反応を1D計算に取り込み、先行研究との比較を行う。しかる後に、速やかに、2D, 3Dの計算を行い、爆発に対する効果を詳細に調べる。特に、最近プリンストン大のグループが中性カレントを媒介とするニュートリノ核子散乱において核子の多体効果がニュートリノのオパシティを著しく下げる(したがって爆発を助ける)という指摘をしている。この現象が再現できるか調べるの急務であると考えている。
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