研究課題
本研究の目的は、日仏トップレベルのNMR測定の技術を融合することで、ウラン化合物で発見された強磁性超伝導の発現メカニズムの実験的解明を進めることである。超伝導はもともと磁場とは相性が悪く、どんな超伝導体も強い磁場をかけていくと、最後には超伝導が壊されてしまう。ところがウラン化合物の強磁性超伝導体では、同じウラン電子が強磁性と超伝導を同時に担っており、さらに驚くべきことに、磁場によって新しい超伝導が誘起される(磁場誘起超伝導)。この特異な超伝導の振る舞いは、強磁性揺らぎを利用した新しい超伝導機構の存在を直感的に示唆している。磁場で安定化する超伝導が解明できれば、超伝導の応用の可能性を大きく広げることになる。研究代表者は本研究を実施するため、本年度10月よりフランス・グルノーブル国立研究所に滞在し、URhGe単結晶において極低温及び強磁場下で73Ge 核の核磁気共鳴(NMR)測定を行っている。本研究に必要な純良なURhGe単結晶は隣接するCEAグルノーブル研究所の試料育成グループにより作成された。超伝導磁石に希釈冷凍機を組み込んでNMR実験を行うことで、17テスラ100mKという極低温強磁場でGe-NMRの信号の観測に初めて成功した。現在、磁場誘起超伝導が出現する10-13テスラの磁場領域での磁気揺らぎの特性を調べている。今回の滞在は来年度7月末までを予定しており、滞在中は主に磁場誘起超伝導の発現する極低温高磁場下でのNMR測定を行い、この特異な超伝導の発現メカニズムの解明を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、平成28年10月よりフランスのグルノーブル国立強磁場研究所に滞在し国際共同研究を進めている。隣接するCEA グルノーブル研究所の試料育成グループの全面的な協力により、73Ge同位体を濃縮した世界最高レベルのURhGe純良単結晶を得ることができた。さらに超伝導磁石に希釈冷凍機を組み込むことで、17テスラ100mKという極低温強磁場で73Ge-NMRの信号の観測に成功している。以上のことから本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
今回の滞在は平成29年7月末までを予定しており、滞在中は主に超伝導磁石と希釈冷凍機を組み合わせた極低温高磁場下の実験を行う。また帰国後は引き続きゼロ磁場下でのGe-NQR実験を実施する予定である。このNQR 実験は磁場を必要としないので、国内の既存の設備を用いて実施することができる。日仏トップレベルのNMR測定の技術を融合することで、ウラン化合物における新奇な強磁性超伝導の発現メカニズムの解明を進める。
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