超伝導はもともと磁場とは相性が悪く、どんな超伝導体も強い磁場をかけていくと、最後には超伝導が壊されてしまう。ところがウラン化合物の強磁性超伝導体では、同じウラン電子が強磁性と超伝導を同時に担っており、 更に驚くべきことに、磁場によって新しい超伝導が誘起される(磁場誘起超伝導)。この特異な超伝導の振る舞いは、強磁性揺らぎを利用した新しい超伝導機構の存在を直感的に示唆している。更に磁場で安定化する超伝導が解明できれば、超伝導の応用の可能性を大きく広げることになる。本共同研究では日仏トップレベルの核磁気共鳴法(NMR) による測定技術を融合し、この磁場誘起超伝導の発現機構の解明を進めた。 研究代表者はまずフランスのグルノーブルにある国立強磁場研究所に滞在し、同研究所のNMR研究グループと共同で、URhGe単結晶において極低温強磁場下での73Ge核の核磁気共鳴(NMR)測定を実施した。超伝導磁石に希釈冷凍機を組み込んでNMR実験を行い、17テスラ100mKという極低温強磁場でGe-NMR信号の観測に初めて成功した。更にその信号を用いて磁場誘起超伝導が出現する10-13テスラの磁場領域での磁気揺らぎの特性を調べた。その結果、磁場誘起超伝導が出現する400mK以下の温度領域においても強い磁場誘起三重臨界揺らぎが存在することを明らかにした。このことはウランの5f電子スピンの揺らぎが磁場誘起超伝導の引力の起源として働いていることを示す重要な結果である。 更に帰国後は同じURhGeにおいてゼロ磁場下のNMR(NQR)測定を実施し、単結晶試料においてGe-NQR信号の観測に初めて成功した。またURhGeの関連物質であるUCoSi2とUPtGeにおいても研究を実施し、特にUPtGeにおいては磁気ゆらぎの異方性がURhGeと大きく異なることを見出した。
|