研究課題/領域番号 |
15KK0175
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (40370382)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2017
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キーワード | 原子ビーム / 超重元素 / ローレンシウム / 相対論効果 / アクチノイド |
研究実績の概要 |
超重元素と呼ばれる原子番号が100を超える重い元素は、その中心電荷が非常に大きいため、軌道電子が影響を受け(相対論効果)、化学的性質を決定づける最外額電子軌道までが変化する場合があると考えられている。しかしながら、このような元素は重イオンビーム核融合反応によって生成が可能であるものの、生成した同位体はすべて短寿命であり、また得られる量も非常に少ない。そのため、その化学的性質は未だよくわかっていない。 本研究で着目している103番元素ローレンシウムは、アクチノイド系列の末端に位置する。ローレンシウムは、強い相対論効果の影響によって、初めて最外殻電子が周期表に従わないことがかねてより予測されていた。申請者は、これまでに第一イオン化エネルギー測定により、ローレンシウムの電子配置が確かに周期性に従わないことを強く示唆する結果を得た。そこで、本研究では、ローレンシウムの原子のスピンを実験的に決定することを目指す。 原子のスピンは、原子ビームを不均一磁場中に通過させ、その際のビーム分裂を観測することによって観測できる。しかしながら、超重元素の原子ビーム生成技術は確立されていない。そこで、第一イオン化エネルギー測定で開発した、ガスジェット結合型高効率表面電離イオン源の技術を応用し、ローレンシウムの原子ビーム生成法を開発する。H29年度より、ドイツ マインツ大学およびスイス ポール・シェラー研究所において、原子ビーム生成法およびその周辺技術、ならびにシミュレーションコードの開発を行う。H28年度はその準備期間とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度年度当初より効率的に準備を進めるため、H28年度3月に給付申請手続きを行った。各手続きは、遺漏なく進められている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、5月末からH29年年末まで、ドイツ マインツ大学に滞在し、Christoph Duellmann教授らと共同して、マインツ大学が所有する研究炉TRIGA施設に設置されているオンライン同位体分離器TRIGA-ISOLを利用した開発を行う。特に、原子ビーム生成時に最大の問題となるビーム損失およびビーム品質の向上を目指し、原子ビーム発生装置およびその周辺技術の構築・開発を進める。 H30年1月より3月末まで、スイス ポール・シェラー研究所に滞在し、Robert Eichler博士とともに、原子ビーム発生装置内における原子ビームの挙動について、シミュレーションコード開発を行う。コード開発については、Eichler博士の開発した真空クロマトグラフ装置のシミュレーションコードをベースに進める予定である。本コードを利用することで、原子ビーム発生装置の開発を効率良く進めることが期待できる。
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