研究課題/領域番号 |
15KK0176
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
北野 龍一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50543451)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 素粒子論 |
研究実績の概要 |
インスタントンによるゲージ理論の真空の理解はトフーフトにより始められ、ゲージ理論の非摂動的性質の理解に大きな役割を担っている。しかし、定量的にどれほどその理解が正しいのかはあまりわかっていない。 本年度は、インスタントン計算が定量的に正しいとされる高温での評価と格子ゲージ理論によるシミュレーションとを比較する研究を行った。カリフォルニア大学サンタクルツ校のMichael Dine氏らが提唱した、グルーオン演算子の相関関数で両者を比較する方法を実際に行い、高温部での一致を見たが、低温部ではやはり大きなずれが生じ、少なくとも定量的評価の破綻をみた。この結果は、国際会議で発表された。 また、インスタントンだけでなく、トーラス上で理論を考察すると、さらに非自明なトポロジーが可能となる。この理論の体積を無限にする極限を考えることによって、物理量は元にもどるが、分配関数にはトポロジーの影響は消えずに残る。これらの考察から、ゲージ理論の相構造についての知見を得ることができた。この結果は国際会議や論文にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、ゲージ理論のトポロジーに関する興味深い結果が多く得られている。数値計算によるものと、理論的考察によるものと両方から非自明な結論が得られている。 数値計算では、gradient flowなどの新しい方法を持ち込み、格子シミュレーションで得られた配位からインスタントンなどの古典的情報を引き出す方法論を確立し、実際にそれを行うことによって、古典的手法の正当性の議論が可能となった。 理論的考察では、θ項の周期性を拡張することにより、非自明な結論が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、米国に渡航し、最新の理論や実験の進展の情報を得るとともに、現地研究員との議論から新しい結果を得ることを目指す。同時に、数値シミュレーションを継続し、ゲージ理論のトポロジーの研究を進める。 SU(2)理論はSU(3)以上のゲージ理論と定性的に異なる可能性をもった理論であり、興味深い研究対象である。今後の研究では、SU(2)理論のシミュレーションにも重点を置き、結果を得ることを目指す。
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