ゲージ理論はゲージ変換で移り変われる場の配位を同一視するというルールに従って構成される。この同一視により、時空が内部空間に巻き付いた非自明なトポロジーの配位が可能となり、実際に物理に多大な影響を与える。しかし、どのような仕組みで影響が現れるのかはいまだによくわかっていない。また、宇宙の暗黒物質候補であるアクシオンは、ゲージ理論のトポロジカルな性質を反映して質量を獲得するため、ゲージ理論の理解は宇宙の歴史の理解にも関連する。特に、アクシオン場のもつポテンシャルの全体像は未だ謎であり、その理解は、現在のアクシオン残存量計算や、アクシオンによるインフレーション模型の定性的な性質を知る上でも必須な情報である。 本年度は、SLACとStanford大学に滞在し、アクシオン研究の最新の結果や、ゲージ理論のトポロジーに関する新しい研究結果の情報を得るとともに、今後の研究に重要な知見をえることができた。トーラス上でゲージ理論を考察して、θ項の値に対する真空の応答の情報を得る研究成果をカリフォルニア大学サンタクルツ校にてセミナー講演を行い、また、様々なゲージ理論におけるθ項に関する議論を行った。 格子計算と準古典的インスタントン計算を比較した研究においては、低温と高温とで定性的な違いが見られた。渡米中にこの結果に関して、現地研究者と議論を行い、理論的理解を進めた。 その他、新しいタイプのアクシオン模型や、2次元、3次元、4次元理論のそれぞれのトポロジカルな性質やその関連についての研究を始め、新プロジェクト立ち上げを行った。
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