アムステルダム大学ファントホッフ機構A. M. Brouwer教授との国際共同研究を更に進展させ、光応答性ロタキサンシステムの構築、及びりん光発光複合材料に関する研究を行った。 光応答性ロタキサンシステムの構築 設計としては2つの等価なステーション、1つの輪成分であるピア―アレーン、2つのステーション間にゲートとしてアゾベンゼン基を導入した光応答性[2]ロタキサンを合成した。光照射前はアゾベンゼン部位がトランス体であり、輪成分であるピラーアレーンは、ステーション間を自由に往復するシャトリング現象が見られた。次に光照射を行い、アゾベンゼン部位をトランス体からシス体へと変化させたところ、ステーション間のシャトリングは阻害された。ステーション間のアゾベンゼンの嵩高さが変化したためである。興味深いことに、アゾベンゼンのシス体からトランス体への熱異性化は、非常に高速であり、室温でも瞬時に熱異性化反応が進行することを見出した。更にその熱異性化反応は、金属イオンの添加、極性溶媒の添加により、室温では非常に遅く、ほとんど起こらないことがわかった。ステーションに用いているトリアゾール部位に金属イオンが配位したためだと考えられる。 りん光発光複合材料 バルクのポリスチレンスルホン酸のりん光発光の応用例として、複合材料を合成した。ポリスチレンスルホン酸部位と他の高分子部位を有する共重合体を合成したところ、共重合体の構造が大きくりん光発光特性に影響することを見出した。
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