研究実績の概要 |
シリカを始めとする様々な金属酸化物の表面上に担持し、触媒としての応用が可能な金属錯体の一つとして、金属―窒素間二重結合を有するイミド金属錯体に着目し、5族金属錯体を用いたアゾベンゼンの窒素間二重結合の切断に関する研究をこれまでに行ってきた。前年度には、低原子価のバナジウム錯体による触媒的なピロール合成反応を達成しており、さらに、同族のニオブやタンタルに関する検討を行った。ニオブやタンタルの塩化物に対し、有機分子還元剤を用いて生成する低原子価種を用いてアゾベンゼンの窒素間二重結合の切断に関する反応を行い、反応中で生成する3価の化学種により窒素間結合の切断が進行してイミド金属錯体が得られることを見出した。。また、2,2’-アゾピリジン存在下で同様の反応を行った場合には、窒素間結合の切断と生成する錯体の多量化が進行し、続いて2, 2’-ビピリジンを添加することで、単核のピリジルイミド配位子を有する錯体が得られることを見出し、その構造を各種分光学的測定、ならびに単結晶X線構造解析により明らかにした。さらに、イミド配位子上のピリジル基は他の金属元素に対して配位可能なメタロリガンドとして作用し、ロジウムなどの後周期遷移金属を添加することで、前周期-後周期異種二核金属錯体が得られることが分かった。ピリジン環は他の金属に対する配位力が高く、一般的な金属還元剤を用いると、還元剤由来の金属塩がピリジン窒素に相互作用して純粋な錯体を単離することが困難であるが、有機分子還元剤の使用により、高純度でピリジルイミド金属錯体を合成できたことが、今回のメタロリガンドとしてのさらなる応用につながったと言える。
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