研究実績の概要 |
本研究は,基課題をより加速させるために高分子微粒子自体に導電性や光機能を有するナノカーボンの一つであるグラフェンを複合化させる検討を行った。イオン液体がナノカーボンとの親和性が高いことに着目し,ポリイオン液体と汎用ポリマのブロックポリマーが粒子内分散安定剤として働くことを期待して,ブロックポリマーで安定化された還元型酸化グラフェン(rGO)分散モノマーを用いてミニエマルション重合により粒子の合成を行い,さらにrGO複合粒子の物性評価を行った。rGO複合ポリマーフィルムを作製し,引っ張り試験の測定結果から単体フィルムや単に混合した系より高い弾性率を示し,均一にrGOが分散・複合されたことを確認した。しかしながら,rGO複合フィルムについて,四端子法を用いた電気伝導度測定を行ったところ,電気伝導性を示さなかった。これは, rGOがポリマー相に均一に分散しているためrGO同士が接触することが出来ないことが原因であると考えられた。そこで,効率よくフィルム内でrGOによる導電パスを形成させるように粒子内部ではなく表面にrGOを複合したrGO被覆高分子粒子の作製を試みた。ミニエマルション重合系において,上記の様に最初からrGOを粒子内に取り込むのではなく,ブロック共重合体のPIL部分のアニオンを親水性のBr -に交換することで,ブロック共重合体を滴界面に局在化させたのち,酸化グラフェン(GO)を媒体に分散させた状態で重合を行い,GO被覆高分子粒子を作製し,その後ヒドラジンを加え,GOの還元を行うことで,rGO被覆高分子粒子の合成を検討した。ブロック共重合体不在系では,凝集,沈降しているのに対して,加えた系では粒子と複合し,分散体を形成しており,rGO被覆高分子粒子の作製が示唆された。また得られた粒子から作製したフィルムは,均一なフィルムが得られ,10-5 S/cmの電気伝導性を示した。
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