研究課題/領域番号 |
15KK0188
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山本 裕子 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (00598039)
|
研究期間 (年度) |
2015 – 2018
|
キーワード | チップ増強ラマン散乱 / 単分子ラマン測定 / プラズモニック化学反応 / SERS化学増強メカニズム |
研究実績の概要 |
本国際共同研究の目的は、SERSを用いて遂行中の分子-プラズモン共鳴間に存在する強結合を元とした反応メカニズム実証研究をさらに発展させ、TERS法を用いてプラズモニック化学反応場におけるプラズモン共鳴の役割を定量的に検証することにある。 昨年度にドイツ イエナ大学との共同研究のための渡航を経て得た経験から、研究の方法についてはより自由な発想のもとに柔軟に選択しながら推進することとした。そこで本年度は、研究フィールドの国際的な現状を鑑み、分子-プラズモン共鳴間に存在するメカニズム実証研究の遂行、特に国内の共同研究者である伊藤民武博士との連携を強化し、これまで代表者が構築してきたSERS測定手法を用いながらプラズモニック化学反応に対する銀ナノ粒子のプラズモン共鳴の役割を明らかにしていく予定であった。 しかしながら、本年度初頭に研究代表者が所属機関を香川大学から北陸先端科学技術大学院大学へと移った際に、これまでの2年間で構築した実験装置一式が移動できずに再度一から立ち上げなければならなくなったため、予定していた実験方法を変更した。 本年度の研究実績は以下の通りである。本研究に必要な実験装置群一式を一から新たに整え、研究プラットフォームの再構築を行った。また、これまでに得られた実験結果を多方面から解釈し当初の目的を達成するために、新たに、密度汎関数法を用いたラマンスペクトルの計算用プラットフォームを立ち上げた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の研究目標は、2016年度にドイツにて Deckert教授およびVladimir教授から教示頂いた研究テーマの立て方を元に、より自由な発想を重視しながら分子-プラズモン共鳴間に存在するメカニズム実証研究を遂行すること、また、今まで代表者が構築してきたSERS測定手法と、国内の共同研究者である伊藤民武博士との連携を強化し、プラズモニック化学反応に対して銀ナノ粒子のプラズモン共鳴が持つ本当の役割を明らかにしていくこととしていた。2017年度初頭に山本が所属機関をこれまでの香川大学から北陸先端科学技術大学院大学へと変更し研究室主宰者となったため、まずは本研究遂行に必須な装置群一式(一部は共同研究者からの貸与分)を香川大学から現所属へと移動することから始めた。 しかし4月初旬に予定していた香川大から現所属への装置移動に際し、共同研究者からの貸与部分について、同研究者の所属機関である産業技術総合研究所から現所属機関への貸与許可が下りず、結果として本研究遂行に必要な装置部分が欠けてしまい同じ研究方法で研究を遂行することができなくなった。最終的には装置群一式をもう一度新たに準備し直さなければならなくなり、そのため研究環境の原状復帰までにほぼ丸一年かかり、本研究の進捗にも大幅な遅延が生じた。以上の理由から、本研究を予定年度内に終了することができなかったため期間の延長申請を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
丸一年も進捗が遅れたため、本年度は再度新たな方法で研究テーマの遂行を行う。本年度は特に、密度汎関数法を用いた単分子ラマンスペクトルの計算に新たに着手し、既存データとの照らし合わせを行った上で論文報告として完成を目指す。また、表面増強ラマン散乱の化学増強効果について、2年前の実験にて得られた知見を元にさらに深めて行く。表面増強ラマン散乱の化学増強効果に関する研究は、同メカニズムに関する仮説の提唱がなされてから既に20年が経過しているが、未だに実験事実を元とした統一的な見解が出されていないため、本年度は主に同メカニズムに関する深い理解を得る方法で研究を推進したい。
|