酸化物半導体を用いた抵抗測定式ガスセンサは日本生まれの重要技術であり、ガス漏れ検知や空気環境のモニタリング等に幅広く利用されている。さらに現在では、微量の環境や人体に悪影響を与えるガスにも検知対象が広がり、住環境保全や製造技術になくてはならないものとなっている。しかし、本センサの大問題は、その消費電力の高さである。酸化物表面の吸着酸素とガスとの反応を利用する本デバイスでは、この気固界面での反応促進のため、300℃程度の加熱が不可欠である。そのため従来型のセンサでは素子の小型化が難しい。センサの小型化・省電力化により幅広い応用を可能にするために、センサの低温作動化が強く求められている。 消費電力の低減、すなわち室温作動化のためには、低温でガスを固体表面と反応させる必要がある。pn接合ダイオードでは光照射によって生成する電子と正孔キャリアが分離できるので、これらを検知対象ガスと反応させることで、室温でも電気特性に変化が現れるはずである。そこで本研究では、この考えに基づき、ガスセンサ研究を各段に発展させるために、国際共同研究により、半導体ナノ結晶を用いたpn接合ダイオードを基礎とする低温作動型ガスセンサの創製を目指す。 本年度はZnOナノロッドをn層、Cu2Oナノ結晶またはPbSナノ結晶をp層とするダイオードを作製した。作製したデバイスは良好なダイオード特性を示し、目的とするデバイスを再現良く作製できる手法を確立できた。これらのデバイスはウェットプロセスによって作製することができ、高温での処理等は不必要であるため、半導体ガスセンサに必要な気固界面をダイオードながら可燃性ガスの表面反応に利用できる。
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