研究課題/領域番号 |
15KK0191
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森 傑 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80333631)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2018
|
キーワード | 集団移転 / コミュニティ / 合意形成 / 意思決定 / 大規模災害 / アジア太平洋 |
研究実績の概要 |
本研究は、オーストラリアの土地交換プログラムと日本の防災集団移転との比較分析を基礎として、マッコーリー大学を拠点に、アジア太平洋地域における大規模災害や都市問題を機とするコミュニティ移転の計画論と再定住モデルの確立へ向けて、学際的な国際共同研究を展開・加速・強化することを目的とする。 今日のアジア太平洋地域は、農山漁村エリアにおける人口減少、都市部の少子高齢化、人口集中によるスラム化、都市スプロールとエネルギー浪費などの深刻な問題に直面している。東日本大震災やオーストラリアの大規模自然災害を機とするものだけに限らず、これら喫緊のグローバルな課題に対して、集団移転あるいはコミュニティ移転という居住環境の再整備と社会共同体の再生という新たなアプローチが注目される。 具体的には、①従前居住・地域環境との比較からみた土地利用計画と空間的継承、②環境移行理論からみた生活者(移転者)への社会・経済・心理的影響、③アジア太平洋地域のパイロット的事例における事業制度・計画の特徴と国際比較、④PPPによる事業運用フレームワークと再定住モデル理論の構築、の4つの課題群に取り組む。 平成30年2月から7ヶ月間の滞在を予定している渡航へ向け、受け入れ先のマッコーリー大学との間で滞在期間中のポジションや研究環境、ビザ申請へ向けての調整を開始した。また、先行して取り組んできたロッキヤーバレーの災害復興に関する共同研究を踏まえ、グランサム地区の追跡調査に関する調査計画の検討・準備を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マッコーリー大学の自然災害研究所は、アジア太平洋地域の自然災害とそのリスクを対象とし、自然科学・社会科学の研究分野および研究者を要した、産学官連携による研究成果の社会還元を重視した文理融合型の研究機関である。主に、自然災害に関するリスクアセスメント、被災によるコミュニティや公共的財産への影響、防災や事前復興へ向けての大規模災害リスク低減モデル、に関する学際的・国際的課題に取り組んでいる。 既に当研究所の協力のもと、ロッキヤーバレー・グランサム地区の現地調査を実施し、コミュニティ移転の制度・システムの日豪比較と復興計画・住宅地計画の特徴および入居後の経年変化に関する先行研究に取り組んでいる。また、基課題アクションリサーチの対象である気仙沼市小泉地区の集団移転は、当研究所が世界的に注目すべきコミュニティ移転と位置づけ、東日本大震災に関する重点研究として追跡調査を行っている。 当研究所は既に、東日本大震災に関する被災と復興について、特に集団移転に伴うコミュニティへの社会心理的影響をテーマに研究を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、滞在期間において①~④の課題群をより共同研究として深化させるべく、同分野に近接した人間地理学を専門とするRichard Howitt教授を主たる共同研究者とし、マッコーリー大学での滞在へ向けての準備を進める。なお、Richard Howitt教授は、主として課題①における空間的継承の分析および課題③における事業制度の分析を担当する。 本研究では、移転するあるいはせざるを得ない生活者の当たり前の日常と生活空間を再生・再建することこそがコミュニティ移転であるとのビジョンのもと、東日本大震災により広く市民権を得ることとなった集団移転とその方法に焦点を当て、アジア太平洋地域での人々の再定住と自立的・持続的な居住環境を再生・再構築するための方策を具体的かつ実用的に検討する。 本国際共同研究は、大規模災害や都市問題に対して復元力のあるコミュニティとソーシャル・キャピタルをいかに再構築するのか、喫緊の社会的・文化的・経済的そして地球環境的な課題を解決すべく、国内外のコミュニティ移転に関する先進事例の詳細なケーススタディと歴史的およびパイロット的取り組みの体系的な比較分析を通じて、グローカル時代における広義の復興施策の再設計へ展開することが目標である。本国際共同研究を通じて、大規模自然災害や都市問題を機とするコミュニティ移転のグローカルデザインをテーマとした、研究代表者がハブを担う新たなアジア太平洋学際研究ネットワークの連携への展開が大いに期待できる。
|