本研究は、オーストラリアの土地交換プログラムと日本の防災集団移転との比較分析を基礎として、マッコーリー大学を拠点に、アジア太平洋地域における大規模災害や都市問題を機とするコミュニティ移転の計画論と再定住モデルの確立へ向けて、学際的な国際共同研究を展開・加速・強化することを目的とする。 今日のアジア太平洋地域は、農山漁村エリアにおける人口減少、都市部の少子高齢化、人口集中によるスラム化、都市スプロールとエネルギー浪費などの深刻な問題に直面している。東日本大震災やオーストラリアの大規模自然災害を機とするものだけに限らず、これら喫緊のグローバルな課題に対して、集団移転あるいはコミュニティ移転という居住環境の再整備と社会共同体の再生という新たなアプローチが注目される。 具体的には、①従前居住・地域環境との比較からみた土地利用計画と空間的継承、②環境移行理論からみた生活者(移転者)への社会・経済・心理的影響、③アジア太平洋地域のパイロット的事例における事業制度・計画の特徴と国際比較、④PPPによる事業運用フレームワークと再定住モデル理論の構築、の4つの課題群に取り組んだ。 受け入れ先のマッコーリー大学人文地理・都市計画学科にて、平成30年3月から9月末まで客員教授として滞在した。先行して取り組んできたロッキヤーバレー・グランサム地区の災害復興に関する共同研究を踏まえ、アジア太平洋地域のコミュニティ移転のパイロット的事例に関する情報収集・フィールドワークを行った。また、将来の学際的な国際共同研究の展開計画についても検討を行った。さらに、本研究の成果を国際ジャーナル(Asia Pacific Viewpoint)へ国際共著論文として投稿し、平成31年2月に採択となった。
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