研究課題/領域番号 |
15KK0192
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野口 聡 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30314735)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 高温超伝導 / 数値解析 / 高磁場 |
研究実績の概要 |
マサチューセッツ工科大学では、1.3GHz NMRマグネットの開発に携わり、インサート・コイルであるREBCOマグネットの個々パンケーキコイルの特性評価実験および遮蔽電流による不正磁場の測定を実施した。今後、インサート・コイルとしての組み立て、またアウター・コイルと組み合わせることで発生する遮蔽電流、遮蔽電流磁場のシミュレーションに必要な実験データを取得した。 フロリダ州立大学では、高温超伝導体を使用したマグネットとして世界最高となる44テスラの発生に成功した。また、遮蔽電流および遮蔽電流磁場シミュレーション・プログラムを開発し、シミュレーション結果と先実験との比較を実施した。比較的よく一致することを確認した。また、開発したシミュレーション・プログラムが高度であることから、一般的な使用に適さないため、遮蔽電流および遮蔽電流磁場の簡易計算法を提案した。今後、国際会議などで公表していく予定である。 さらに、44テスラ発生実験で、高磁場下での新たな現象もしくは問題として、トルクやホール効果の問題があることが示唆された。これらの現象は、これまでにも発生しているはずであるが、10テスラ程度では現象として確認されにくく、44テスラのような高磁場下で顕在した問題である。現在、これらの現象をシミュレーションにより裏付けすることを目標に、解析ツールを開発している。該当年度では、それらを明らかにするために、これまで開発してきた部分要素等価回路法(PEEC法)を44テスラ発生実験に適用させる修正を実施した。今後、トルク、ホール効果の影響を明らかにしていく予定である。 れらの成果は、国際会議Applied Superconductivity Conferenceで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遮蔽磁場、遮蔽電流磁場のシミュレーション・コードは、次年度に開発する予定であったが、すでに完成した。そして、新たに顕在化した現象についての解析コード開発に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、フロリダ州立大学で、トルク、ホール効果の影響を明らかにする数値シミュレーション・コードの開発に取り組む。これらは、数年前にProf. Hahnにより提案された無絶縁巻線技術が関係しており、高磁場下ではその現象が顕在化する。現時点での40テスラ超マグネットは、実験的な小さなマグネットであるため、これらの現象により破滅的な問題とはならないが、NMRなどの実応用を目指した時に、大きな問題となる恐れがある。したがって、シミュレーションによりその影響を明確にする必要が新たに発生した。そのために、シミュレーション・コード開発とともに、今後予定されているREBCOコイルによる45テスラ発生実験に携わり、それらの実験結果と比較検討することで、シミュレーション手法の妥当性検証を実施する予定である。 また、予定を変更し、2017年8月にふたたびマサチューセッツ工科大学へ移動する予定である。昨年度の部分コイルの実験により、シミュレーションに必要なパラメータ同定は終了したが、1.3GHz NMRマグネットが作る不正磁場のシミュレーションを実施する。さらに、上記でも問題にした、トルク、ホール効果の影響もシミュレーションにより確認する予定である。 2017年10月より、日本に戻り、REBCOマグネットによる高磁場発生時に抱えている緒問題について再度検討する。とくに、均一磁場発生のためのシミング手法のためのシミュレーション・コード開発に着手する。マサチューセッツ工科大学やフロリダ州立大学と連携を取りながら、新たなシミング手法の開発を検討する。 これらの成果は、国際会議Magnet Technology 2017および21st International Conference on the Computation of Electromagnetic Fieldsなどで公表する予定である。
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