研究実績の概要 |
最終年度は、局所的な電磁非破壊評価技術開発のために、小型化した素子の高感度化について注力的に検討した。得られた成果を以下にまとめる。1. これまでの検討で、30マイクロメートルまで小型化した素子の動作確認は行っていたが、今年度は比較的小型化したサブミリ長の素子において変化率や感度評価を行った。単層厚み3マイクロメートルの素子において、通電部1ミリ、周波数1GHzにおいて約300%程度の変化率を実現した。薄膜を用いた磁気インピーダンス素子で、1ミリという短い素子においてこれほど高い感度は報告例がない。2.単層素子において素子長100マイクロメートル以下にまで小型化した場合、100マイクロメートルでは最大30%、50,30マイクロメートル長では約10%という変化率をいずれも周波数1GHzで実現した。変化率は素子長が大きい場合やワイヤ・リボンと比較して小さいが、非常に小型化した素子において、10%以上のインピーダンス変化が得られたことは、小型・高感度磁界センサ実現において意味がある。3.素子長100マイクロメートルまで小型化し素子において磁区観察を行った結果、センサ動作として必要な磁区構造が概ね実現されていることを確認した。一方で、素子端部においては、磁区制御不十分の部分もあるので小型化する際の課題として残る。 4. ザールラント大で試作した積層素子については、400から700マイクロメートル長において、60~80%の変化率を得た。得られた結果を国際会議でザールラント大の関係者と議論した。4. 単層の場合、変化率は大きいが膜厚を大きくするために成膜時間を要する、反磁界の低減が必要であるのに対し、積層は膜厚を薄くでき低インピーダンスを実現しやすい等のメリットがある一方、多層構造で複雑である。用途に応じて使い分ける必要がある。
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