ポリオールと呼ばれる多価アルコールを用いた液相法、すなわちポリオール法で合成したFeNi層状水酸化物に還元熱処理を施すと、比較的低温かつ短時間でも熱平衡に近い状態のFeNi合金粒子が得られる。本研究では、還元熱処理による合金化機構を明らかにして上述のプロセスを改良することにより、希土類元素を一切用いずに室温で大きな保磁力を示す永久磁石用の合金粒子の開発を目的とする。還元熱処理による合金化機構を明らかにし、優れた磁気特性の合金粒子を得るには、出発素材となる層状化合物粒子の結晶構造および形態を制御することが重要となる。そこで、本年度の11月1日より仏国に渡航し、ポリオール法での層状化合物の合成および制御に関して多くの業績を挙げているUniversity Paris DiderotのProf. Dr. Souad Ammarと共同研究を開始した。具体的には、異なるポリオールおよび金属塩を用いてポリオール法で合成を行った。Co塩を用いた合成の結果、層状構造を有したCoアルコキシド粒子を合成することに成功した。また、合成したCoアルコキシド粒子を、水を含むアルコールに浸漬すると層状構造の水酸化物粒子が得られることを見出した。この方法ではCoアルコキシドからCo水酸化物への変態に伴い、粒子の形態およびサイズはほぼ保持される。水酸化物粒子の形態を制御できる有効な手法を見出すことに成功した。一方、Fe塩を用いた合成の結果、ロットおよびワイヤー状のFeアルコキシド粒子の合成にも成功した。合成条件の調整により、Feアルコキシド粒子のアスペクト比を制御できることが明らかになった。
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