本研究では、ポリオールと呼ばれる多価アルコールを用いた液相法、すなわちポリオール法によるFe基微粒子の合成およびその熱処理により、希土類元素を一切用いずに室温で大きな保磁力を示す永久磁石用の素材を開発することを目的とし、ポリオール法でのFe基微粒子の合成および制御に関して多くの業績を挙げているUniversity Paris Diderot(仏国)のProf. Dr. Souad Ammarとの国際共同研究に取り組んでいる。 昨年度までの研究において、ポリオール法によりロット状およびワイヤー状のFeアルコキシド粒子の合成に成功した。また、その粒子に熱処理を施すことにより異方形状を有した酸化鉄粒子が得られることを見出した。本年度は、ポリオール法によるアルコキシド粒子の合成と熱処理による酸化鉄粒子の作製の条件が形状に及ぼす影響を多角的に検討した。その結果、有機保護剤を添加して合成を行うと、ロット状のFeアルコキシド粒子は短くなることが明らかになった。一方、溶液の撹拌を行わずに合成を行うと、ワイヤー状のFeアルコキシド粒子は長くなる。また、熱処理を施して酸化鉄粒子を合成するとアスペクト比は小さくなるが、昇温スピードを下げることによりアスペクト比の減少は大幅に抑制できることを突き止めた。すなわち、ポリオール法で合成したFeアルコキシド粒子を前駆体とし、それに熱処理を施すプロセスでワイヤー状の酸化鉄粒子を得ることに成功した。また、上述の成果に基づいて、University of Maine(仏国)のProf. Jean-Marc GrenecheおよびUniversity of Lorraine(仏国)のProf. Michel Francoisとの国際共同研究を開始した。さらなる研究の発展が期待される。
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