研究実績の概要 |
本共同研究の目的は、メリライト型結晶Ca2Al2SiO7をベースとして、高抵抗かつ高強度をもつ新規圧電結晶を合成し、その高温物性を明らかにし、さらに高品質バルク結晶を育成することである。本年度は昨年度に引き続き、第一原理計算を用いたメリライト型結晶の圧電性の発現メカニズムの解明を行った。せん断変形させたモデルから計算した発生分極の方位、また、その分極モーメントと歪み量から計算した圧電定数(e14、e36)のオーダーが実測値と一致した。そこで、各サイトの原子変位により生じる分極量を調べたところ、破壊強度が高いと考えられるe36でBサイトが大きく影響していることが分かった。こららの知見を基に新規組成を探索した。用意した試料は(Ca,Sr)2Al2SiO7(CSAS)、(Ca,Sr)2MgSi2O7(CSMS)、(Ca,Ba)2Al2SiO7 (CBAS)、(Ca,Sr,Ba)Al2SiO7 (CSBAS)の4種類である。固相反応で得た粉末結晶を相同定を行ったところ、CSAS結晶およびCSMS結晶は全組成で単相であり、CBAS結晶はBaがCaに対して5%置換した組成で異相が見られ、CSBAS結晶ではさらに少ないBa置換量で異相が見られた。そこで、単相が得られたCSAS結晶、CSMS結晶、CBAS結晶に対して、レーザー加熱溶融法による単結晶の育成を試みた。その結果、CSAS結晶とCSMSS結晶において、どちらもSr置換量がCaに対して80%以上置換した組成でも無色透明でクラックがほとんどない結晶が得られた。また、CBAS結晶では結晶内にインクルージョンが見られた。これらの結果を基に、CSAS結晶とCSMS結晶についてチョクラルスキー法によるバルク単結晶育成を行った結果、どちらの結晶も直径2 cm、長さ2 cmを超すバルク結晶が得られた。
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