高いイオン伝導性と化学的耐久性を両立する一つの手法としてイオン伝導相とマトリックスの分相が指摘され、市販の高分子形燃料電池の電解質や超イオン伝導性ガラスも分相することが知られている。音響解析より得られるヤング率や内部摩擦に着目して、スピノーダル分相組成のリン酸塩およびホウ酸塩ガラスの分相過程を調べた。ホウ酸塩ガラスのヤング率は加熱に伴いはじめ上昇して、ガラス転移温度より200℃近く低い260℃辺りに内部摩擦の極大値を観測した。この温度で示差走査熱量分析(DCS)および熱膨張(TMA)測定においても極めてわずかながらベースラインの傾き変化を確認した。Tg以上の温度域において温度一定で数100時間保持したところ、弾性率は数時間程度で一定に達した。3配位/4配位ホウ素の比は分相に伴い変化することが知られている。ラマン分光測定よりホウ素配位数の変化を調べたところ、弾性率の変化と同程度の時定数で3配位/4配位の変化することを確認した。処理時間と供に分相組織は粗大化すると考えられるが、弾性率や内部摩擦からそのような傾向は認められなかった。他方、温度一定で長時間保持すると弾性率と内部摩擦はいずれも上下におよそ一定周期でゆらぐことが認められ、この周期や振幅は温度上昇に伴いわずからながら短く、また大きくなった。高いイオン伝導性のためには加熱が必要で、特にガラス転移温度前後における長期間の力学挙動と分相構造の変化、またイオン導電率を明らかにすることは重要であり、ガラス転移温度以下で保持した場合などの詳細について引き続き調べている。
|