2018年度は、高温超伝導体からのテラヘルツ発振、ジョセフソンプラズマ放射の時間発展観測と放射テラヘルツ波の偏光評価をおこなった。 (1)時間発展観測:2018年2月に研究代表者の研究室にチタンサファイアパルスレーザーが移設されたため、京都大学で効率的な研究ができるように、2017年度に滞在したEcole Normale Superieure (ENS)と同様のテラヘルツ時間発展分光計を京都大学で構築することを進めていった。ENSの分光計において独自性の高い光伝導アンテナを6月の渡航で入手し、関連する光学部品を購入して調整していった結果、2月にテラヘルツパルスが得られた。既存のTHZ-TDS装置を併せ用いて、高温超伝導体単結晶の透過スペクトルを測定した。その結果は、論文執筆のため解析中である。 (2)偏光評価:2017年度にENSで確認した波長板を用いて、偏光パラメータの精密評価を行った。まず、通常作成されている長方形メサ構造素子について、単一メサでは偏光が楕円であったものが、同時に2つのメサが発振する状態での偏光は、より直線に近いものになった。これは、2つのメサが位相同期して発振している証拠となる。また、円偏光デバイスで偏光評価を行った結果、電流注入に伴う局所的温度上昇が決定要因となるヘリシティが得られた。この結果は、2017年度にチュービンゲン大学で観測した低温レーザー走査顕微鏡の結果とコンシステントである。以上の成果は、2編の論文として出版するべく執筆中である。 上記研究、特に(2)に関して推進するために、特定研究員を4月から9月まで雇用した。ジョセフソンプラズマ放射の新機能を開拓する研究を進めるために、6月にロシアに滞在してのInstitute of Radioengineering and ElectronicsのKoshlets教授らと議論した。
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