本研究は、基課題の若手研究(A)の成果「体積変化に起因したコンクリートの不均一損傷がRCはりのせん断特性に与える影響評価」を展開し、既設コンクリート構造物の耐震性、被災回復性評価の高精度化を目指すものである。 本申請課題では、まず材料の力学的特性や破壊進展挙動を把握するため要素実験を神戸大学で実施し、画像解析対象の広域化、動的挙動の評価の実用化の可能性を検証した(成果(1))。さらに、海外共同研究者であるカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のBenson Shing教授の下に客員研究者として所属し、計測・評価手法の改良を試みた(成果(2)、成果(3))。得られた成果は以下の通りである。 成果(1) 超高強度繊維補強セメント系材料の非常に急激に進展する破壊挙動を捉えることを目的として、ハイスピードカメラとデータロガーを用いた破壊現象計測を実施し、この材料の急激に進展する圧縮破壊挙動の高速度変形画像計測に成功した。また、測定した荷重データから、圧縮強度が高いとエネルギー解放速度が大きくなる傾向があり、繊維補強の有無によって載荷軸直交方向の膨張変形が異なることがわかった。 成果(2) 画像解析に用いる画像相関法をC++に実装したプログラムを開発した。開発プログラムによって、測定効率を向上させることができると伴に、測定エラーとなる供試体の表面輝度値に関する感度を向上させることに成功した。 成果(3) プレキャストコンクリート橋脚の耐震性能の評価のため、Shing教授との共同研究によって、鋼材とコンクリート間の付着特性を考慮できる非線形動的解析プログラムを改良した。本研究による解析対象の広域化に関する展開の実施可能性を示した。 なお、この成果の海外共同研究に関する展開の方向性を確認することができたため、今後は実構造物の動的地震時挙動の評価等の分野への展開が想定される。
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