研究課題
本研究では,平成29~30年度にバンドンのインドネシア人間居住研究所に長期滞在し,同国で急増する中間層向け中高層集合住宅を対象とした省エネ基準を共同策定することを目標とする。平成30年度に得られた研究成果は下記のとおり。①スラバヤの低コスト集合住宅(n=315)を対象とした実態調査結果に基づき,同国居住者の窓の開閉行動と熱的快適性の関係を考察した。居住者の窓開放パターンは4つに分類され,終日窓を開放する世帯が最も多かった(57%)。しかし,窓を開放した場合にも,十分な風速が得られず気温が上昇するのみで熱的快適性はむしろ悪化するケースが多かった。②日射遮蔽と通風を両立させる建物外皮を検討した。まず,緑のカーテンに着目したが,気温低減効果は部屋中心まで到達せず,加えて風速が減衰するため,総じて熱環境改善効果は得られなかった。一方で,気温の日較差を利用した床放射冷房システムを提案し,小型の実験住宅を用いた実証を行った。潜熱蓄熱材を用いて蓄冷効果を高めた結果,制御状態に比して日中の床表面温度が約1.6℃低減した。③インドネシアで一般的な中廊下型集合住宅を対象として,ヴォイドを導入することによる自然換気促進効果を風洞実験によって考察した。その結果,1.5-3m程度の幅の狭いVoidを配し,さらにその下部に板状のWind Catcherを取り付けた場合,1階ピロティを通って流入する風がVoid内に導かれ内部の風圧を増加させた。この効果によって,風下側にあっても住戸内の通風が確保されることが分かった。補助事業期間全体を通じて実施した研究の成果として,これまでの研究結果を応用した実大の実験住宅の詳細設計を行い,テガル市において2019年4月に建設を着工した。今後は,本実験住宅を用いた実証を行い,提案する省エネ基準化方法を精査し,最終的に既存の集合住宅設計ガイドラインに盛り込む予定である。
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Atmosphere
巻: 10(4) ページ: 182
https://doi.org/10.3390/atmos10040182
Buildings
巻: 9(1) ページ: 22
https://doi.org/10.3390/buildings9010022