研究課題/領域番号 |
15KK0211
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 一秀 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (20329220)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2018
|
キーワード | 数値気道モデル / 経気道暴露 / 計算流体力学 / in Silico model |
研究実績の概要 |
室内環境中に存在する各種のガス状・粒子状汚染物質による経気道暴露の予測や制御,もしくは,鼻腔を含む人体呼吸器系を利用した薬物送達システムDDS(Drug Delivery System)の開発を進める上で,鼻腔から気管・気管支内の速度場・温度場・湿度場・汚染物質輸送現象,即ち気道内の流体工学的な基礎情報の把握が重要な課題となっている.本研究は,実人体を用いた試験(in vivo)に代替可能な数値気道モデル(in silico Airway)の開発を目指すものである.特に経気道暴露試験で汎用的に使用される実験動物であるラット,イヌ,サル,人間の各数値気道モデルを開発することで,動物実験や模擬実験(in vitro)の代替法となりうる普遍的な数値解析モデルの構築を目指すものである. 豪州RMIT大学の共同研究者であるProf. TuならびにDr InthavongとはWEB会議システムを用いて定期的な情報交換を行うと共に,ラット,イヌの気道モデルデータを共有することで数値解析のQuality Controlに関して合理的な共同研究実施の方法を議論している.また,アカゲザルモデルに関してはSTLデータの共有による三次元モデル構築精度の相互比較を行うと共に,PIVによるサル上気道内流れの高精度計測法に関して情報交換を行いながら,実験を推進している. 平成29年度は,具体的に渡航による共同研究実施の第一弾として,2018年2月3日より2月14日に豪州メルボルンのRMIT大学に滞在し,共同研究者であるProf. TuならびにDr Inthavongと国際会議COBEE 2018を共同開催した.また,2018年4月からの本格的な渡航による共同研究推進のため,現地で実験設備の準備と計算モデルの整理を入念に行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本格渡航は研究最終年度(3年目)に計画しており,その渡航に向けた入念な下準備を行うと共に,豪州RMIT大学の共同研究者と共に豪州で国際会議を共同開催した.当初の研究計画を大きく変更すること無く研究を進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度であるH30年度は,一年間のRMIT大学滞在によりJiyuan Tu教授,Kiao Inthavong博士の研究グループと数値気道モデル開発で共同研究を推進する.具体的課題は下の3点である. 課題(1):実人体のCT (コンピュータ断層撮影)データを用いた数値気道モデルの作成 課題(2):ラット,ビーグル犬,カニクイザルのCTデータを用いた数値気道モデルの作成 課題(3):数値気道モデル内の流れ場・汚染物質拡散場解析結果の検証用高精度実験データの計測 上記課題(1)では,性別や年齢別に複数の実人体CTデータを用意し,複数の数値気道モデルを作製し,作成した数値気道モデルと計算流体力学CFD (Computational Fluid Dynamics)を連成させて気道モデル内の速度場・温度場・湿度場・汚染物質濃度場の詳細解析を行う.課題(2)では,経気道暴露試験に利用される実験動物を対象として数値気道モデルを作製する.ラット,ビーグル犬,カニクイザルを対象として数値気道モデルを作製し,その流体工学的特徴を定量的に明らかにした上で,人体の気道モデルとの相対的差違を整理する.ラットから人間まで,経気道暴露試験で対象となりうる哺乳類を全てカバーすることで,in vivo試験の代用となりうる数値気道モデル(in silico サロゲートモデル)を整備する.課題(3)ではラット,イヌ,サル,人間の4種の数値気道モデル幾何形状データを基に3Dプリンタにて透明アクリル製の気道モデルを作製する.その上で,粒子画像流速計測法PIV (Particle Image Velocimetry),粒子像追跡流速計PTV (Particle Tracking Velocimetry)を併用して複雑幾何形状である気道モデル内の流れ場,微粒子拡散性状を定量的に計測する手法を確立する.
|