研究課題/領域番号 |
15KK0216
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
三宅 弘晃 東京都市大学, 工学部, 准教授 (60421864)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 宇宙環境 / 宇宙機 / 帯電 / 衛星設計 / 電子物性 |
研究実績の概要 |
研究の実施状況について:今回の研究実施内容について、議論を行った。まずは太陽光反射材であるフッ素系の高分子材料である(Ag-FEP)を用いて実施することとした。この材料は宇宙機に実際に用いられているシェルダール社製の物を用いる。また、単純に帯電しやすい・あるいはしにくいと言う事ではなく、帯電電荷がミクロ的に見て材料の分子構造の何処に捕獲されているか、電子物性の観点から明らかにすることを試みることにした。量研機構・高崎量子応用研究所にて作成した陽子線照射フッ素材料(宇宙機の太陽光反射材に使用)について、フォトルミセッセンス(PL)、FTIR、示差走査熱量分析(DSC)、NMRなどの分析を実施していく事とし、まずPL及びDSC測定を試みた。LAPLACEで開発されたPL計測システムにより、励起光波長領域(200~300nm)において、未照射試料では280nm付近の発光のみ観測されるが、照射試料においては、全ての領域において発光が確認されるという結果が得られた。試料は陽子線照射により重度の分子鎖切断が発生している事を示唆している。また、DSCによる分析結果では、未照射材料と比較し照射材料では、融点が高くなり、材料が硬質化している事が分った。陽子線照射FEPでは分子鎖の切断が発生し、またそれにより切断箇所において架橋が発生し未照射試料と比較し硬質化したと考えられる。今後NMR等の計測を実施し、その結果を量子科学計算(現在計算を実施中)と比較・考察をしていくこととした。尚、本研究成果の一部は、本研究領域の権威的国際会議の一つであるIEEE-CEIDPに「Physicochemical Analysis for fluorinated Polymer Films Irradiated by Proton」(受付番号:0953-000206)という題名で投稿し、既に採択通知を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の実施状況について:フォトルミセッセンス(PL)、FTIR、示差走査熱量分析(DSC)、NMRなどの分析実施については、順調に進んでいる。LAPLACEに設置されている宇宙環境模擬チャンバーであるMATSPACEについては不具合が生じていたが、動作不良調査の結果、チャンバー内部の電子発生部や真空計器周りに汚損が確認され電子線発生部のシーリングバルブより空気のリークが確認された。以上よりチャンバー内の洗浄、真空ポンプの交換、バルブの洗浄とシーリング材の交換等を行った。現在(5/13時点)で復旧した。 研究ネットワークの構築状況について:LAPLACEの主要メンバー、及びONERA/CNESと今後の共同研究の方向性についての議論を行った。研究課題の共有と学生交流中心とした研究インターンシップの実施について合意を得た。さらに研究所の所長Dr.Lebeyからは本学との共同研究についてLIA(International Associate Laboratory)としての組織形成の提案があった。 現状の問題点について:ONERAとCNESとの打ち合わせを9月の渡航以降、定期的に行っている。この中でCNESの国際戦略の変更があり、申請者が予定していた在外研究で利用を予定していたCNES資本による装置が、非公開となってしまった。フランスは衛星の帯電設計に関してISOなどの国際規格からも離脱し、海外交流をしないと方向性に舵を切ってしまったとのことである。しかしながら、研究交流の意思はあり今後も引き続き継続して行っていきたいとの事であり、打ち合わせの中でモデル化等の設計標準に関しない分野について2017あるいは2018年度に別の装置を利用し研究できないか、現在引き続き交渉・検討していく事となった。
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今後の研究の推進方策 |
LAPLACEに設置されている宇宙環境模擬チャンバーであるMATSPACEはリーク等により利用できない不具合が続いていたが、その不具合の解消を目指す。(5/13時点で不具合を解消し、電子線照射可能な状態となった。)チャンバー内に設置されている帯電計測装置も半年以上利用してこなかった為、まずは帯電計測装置の調整を行い、帯電計測が行えるように計測環境を整備し、帯電計測試験を実施する予定である。また、物性計測についてはNMRの計測を行う予定であり、量子化学計算で利用する数値計測プログラムであるGAUSIAANにおいて、NMRスペクトルの計算も実施できるため、双方の結果を比較し、放射線を照射した材料の分子構造変化について考察していく予定である。 また、6月頃に本学で開発した高温対応空間電荷・伝導電流同時計測システムをLAPLACEに導入し、電子線や陽子線を照射したポリイミド材料やフッ素系材料などの計測を実施視する。さらに、現在本学で開発中の半導体センサを用いた帯電計測装置をLAPLACEに持ち込み、軌道上の電子環境を模擬した照射環境で帯電計測可能か試験を行う予定である。 また、10月にはデトロイトで開催されるIEEE-CEIDPにて、本共同研究の成果の一部について「Physicochemical Analysis for fluorinated Polymer Films Irradiated by Proton」(受付番号:0953-000206、採択済み)というタイトルにて発表を行う。 また、ONERAとお互いに行っている基礎研究に関するワークショップを学生の発表を交えて行う事を2017年度中に計画をしている。
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