研究課題/領域番号 |
15KK0217
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
宮元 展義 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (80391267)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | DNA / ナノシート / コロイド / 液晶 |
研究実績の概要 |
2017年6月から7月にかけて、パリ南大学固体物理研究所のP. Davidson教授の研究室にて、研究を進めた。特に、溶液中に共存する二重鎖DNAが、粘土鉱物ナノシートコロイドにおける液晶相形成に、どのような影響を与えるかについての詳細な議論と、実験を進めた。研究は、研究室所属のE. Paineau博士に加え、ソルボンヌ大学のL.Michot教授とも共同で進めた。 DNAは負電荷を持ち、ナノシートも負電荷をもつこと。そのため、当初の予想としては、これらを混合した場合に、系は反発力支配となり、主に枯渇相互作用によるミクロ相分離に起因する液晶相のわずかな構造変化が起こると考えていた。しかし検討の結果、ナノシートの辺縁部の水酸基とDNAのリン酸部位の間に部分的な引力相互作用が起こることが、吸着等温線作成などによる実験で明らかとなった。さらに、このような引力相互作用の結果、僅かなDNAの添加が、ナノシートの液晶相形成を著しく促進することが明らかとなった。X線小角散乱による構造解析の結果、DNAの添加量やナノシートの濃度に寄らず、ほぼ一定の40nmナノシート間の間隔を示すこともわかった。バイデライトとモンモリロナイトという平均粒径や電荷密度の異なるナノシートを用いた場合でも、ほぼ同様の結果となった。また、平均分子量が異なるDNAを用いた場合でもほぼ同様の結果となった。これらは、予想に反する、極めて興味深い結果であり、学会や論文で、すでに発表を行った。 来年度は、6ヶ月の滞在の間に、パリ南大学固体物理研究所の構造解析技術や、マテリアルレベルの交流に立脚した研究をさらに進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
滞在先のP.Davidson教授や他のラボメンバーと様々な側面について詳しいディスカッションを行い、また交流を深めることができた。また具体的な研究では、DNAとナノシートの間に当初想定しなかった相互作用が働いて、ナノシートの液晶相形成を著しく促進することなどが明らかとなり、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、P.Davidson教授の研究室に6ヶ月間滞在し、さらに研究を進める。滞在先のDavidson教授は小角散乱法と液晶全般について、極めて正確でかつ先進的な解析技術と知識を有しており、この観点から、共同研究の発展をさらに大きく進めたい。また双方が持つマテリアルの複合化などをおこなうことで、さらに研究を推進する予定である。
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