砂浜に人工的に造成された直線状砂丘は,波浪・高潮・津波等の災害発生時には堤防としての機能を有するものの,飛砂により数十年程度で分裂することが報告されている.砂丘分裂が生じると堤防としての機能は著しく損なわれ,海岸管理上も問題が生じる.この直線状砂丘の分裂メカニズムを解明するため,2017年度はLarge Eddy Simulation(LES)モデルを用いて砂丘周辺の風場再現に取り組んだ.風向によって特徴的な砂丘背後の風場特性が得られることは示したものの,現時点で得られているLESモデルによる直線状砂丘周辺の風場再現結果からは,現地で認められるような局所的な陸向きの風速の増大による砂丘分裂メカニズムを説明することが困難な状況であり,今後計算方法の改良が必要とされる. なお,研究代表者の長期的な研究の目標は,山から海までの一連の土砂輸送モデルを結合し,飛砂モデルも考慮して汎用的な砂浜-砂丘長期変形予測技術を開発することにある.この開発基盤となる研究ネットワークの構築は国際共同研究の主要な目的の一つであったが,オランダ渡航中に多くの研究者と情報交換を行い,研究ネットワークを強化した.特に受入研究者とは,日本全国の海域における土砂の移動限界水深に関する既存式の適用性に関する共同研究を行いこの成果が学会発表に採択され,また,研究代表者がこれまでに得た日本全国の河川から海岸への土砂供給ついての草稿を共同執筆するなど,当初の計画以上に共同研究が進展した.
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