本研究では,ヒト体内環境下においてタンパク質の物質輸送現象を能動制御でき得る機能性透過膜の実現を図ることを目的としている.平成30年度までに本格的な渡航先滞在を行い,相手先研究機関から機能性透過膜の提供を受けつつ,タンパク質部室拡散に関するパラメトリックな実験を進めてきた.特に,膜厚一定の条件で代表孔径の影響について詳細に検討してきた.その結果,タンパク質の束縛拡散においては,透過量は通過チャネルの孔径に大きく依存し,小さい孔径ほど高い物質流束が維持されていることを明らかにした.また,チャネル形状は物質流束を時間方向に平滑化させることに影響していることも明らかにした.研究計画書では平成30年度中に本事業を終了させる予定であったが,年度末の研究総括において,相手側研究者との予定が合わなく十分な議論ができなかったことから,論文化作業を平成31年度の4月に行うため事業期間を延長した.年度初頭に研究報告会の機会を設け,これまでの研究を総括するとともに研究成果を国際共著論文として年度内に国際学術会議にて発表した.なお,この発表において本研究成果が優秀講演論文賞を受賞した. また,年度初頭の報告会の後も,別途予算を利用して海外共同研究者が訪日し,引き続き本研究の今後の方向性について議論を行ってきた.相手先の機関では今後も複数種の新たな機能を有する膜材質を開発しており,本事業の発展的形態として国際共同研究を進めていくこととなった.特に,機能性透過膜の膜壁の濡れ性について制御可能かどうかについて,実験的アプローチから進めていくこととなった.一旦は本事業は終了するが,今回の渡航で築いた国際研究コミュニティを維持し,引き続き研究を進めていくこととなった.
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