研究課題
再生医療に用いるための肝臓や膵臓などの厚みのある重要な臓器・組織を作製することは、未だに困難である。この理由は、組織が厚くなると、酸素の供給が組織表面からの拡散のみでは不十分となるためである。したがって、cmサイズの立体的な組織の作製には、酸素や栄養素の運搬を担う血管網構造を作製する技術が必要である。しかし、このような血管網構造を生体外で構築する技術はこれまでに確立されておらず、再生医療分野における最大の課題の1つとなっている。渡航先研究機関(ミラノ工科大)のProf. Gabriele Dubiniの研究室は、精密に流体の流れを制御した環境下で、血管新生のメカニズム解明や血管新生と他の種類の細胞との相互作用を解析している。独自の実験系および解析系を有するのみならず、医学や工学、生物学の様々なバックグランドを持つ研究者が集まっている。この研究室に滞在し、実際に実験技術を共有することで、当初の研究計画が達成されつつあり、またさらにそこから派生した様々な研究テーマが生まれつつある。特に、研究計画における独自の戦略は、電気化学反応を利用した毛細血管網の組織内への導入、およびこれを用いた血管網を備えた肝組織への構築であったが、渡航先研究室の持つ生体の発生プロセスに関する知見や血管新生の制御技術を取り込むことで、重要な成果が得られている。その結果は、平成28年度は投稿論文2報(いずれもIF=5以上のジャーナル)として受理された。
1: 当初の計画以上に進展している
学内業務および文部科学省学術調査官の任務のため、海外渡航期間を1回2週間程度とし、おおむね3ヶ月に1度渡航することとした。これにより最大3年間の密接な関係が約束されたことから受け売れ研究室においても主要プロジェクトと位置づけられ、多くの研究者、学生が参加することになった。このため、研究の進捗は当初予定していた以上に進展しており、すでに英語投稿論文2報に結実している。
今後も渡航先との密接な関係を維持して研究を推進する。また、渡航先研究者の1人がスイスの研究所に新たに研究室を持つこととなり、共同研究を継続するために新たに訪問先に追加する予定である。また、研究の進捗に伴い渡航先の共同研究者であるオーストラリアの研究者とも共同研究がスタートすることから、同じく新たに訪問先として追加する予定である。このようにして出来る限り国際共同研究を加速・拡大に務める。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 43375
10.1038/srep43375
Advanced Healthcare Materials
巻: 5 ページ: 1617-26
10.1002/adhm.201500958