研究課題/領域番号 |
15KK0232
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
福田 淳二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80431675)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2019
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キーワード | 再生医療 / 毛細血管 / 電気化学 / 光架橋性ゼラチン / 肝臓 |
研究実績の概要 |
最初の渡航先研究機関であったミラノ工科大(Prof. Gabriele Dubini)の研究室は、精密に流体の流れを制御した環境下で、血管新生のメカニズム解明や血管新生と他の種類の細胞との相互作用を解析している。独自の実験系および解析系を有するのみならず、医学や工学、生物学の様々なバックグランドを持つ研究者が集まっていた。そのため、渡航先研究機関から人的ネットワークがオーストラリア、アメリカ、韓国などへ広がり、当初よりも幅広い国際共同研究を展開できた。オーストラリアの研究者とは、電気化学細胞脱離を利用した血管内皮細胞からなる構造体のみならず、さらにその外側に高密度な平滑筋細胞層を付与した2層構造の血管様構造の構築を実現した。また、アメリカの研究者らとは、血管構造を含む骨組織構造の構築に取り組んだ。ここでは球状組織を用いたバイオプリンタ技術も組み合わせることで、骨細胞のリクルートが可能な送液可能な血管構造を含む骨移植体を作製できることを示した。これらは国際共著論文2報に結実した。また、すでに大学間MOUをミラノ工科大学とは締結していたが、本国際共同研究が起点となってオーストラリアの大学(ウーロンゴン大学)と新たに大学間MOUを結ぶことが実現した。そして、ミラノ工科大学、ウーロンゴン大学と、それぞれ学生の研究室への中長期(数か月から半年)の滞在を実施し、またウーロンゴン大学のポスドクが日本学術振興会の外国人特別研究員に採択されて、研究代表者の研究室に2年間の予定で滞在している。このように、国際共同研究が着実に強化されてきていると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーストラリアの研究者らと実施した高密度な平滑筋細胞層を含む血管構造の構築に関する研究は、Journal of Bioscience and Bioengineeringに掲載された。このジャーナルは日本生物工学会が刊行する英文誌であるが、Elsevierから出版され、インパクトファクターが2.0を超えるジャーナルである。また、アメリカの研究者らとの共同研究である血管構造を備えた骨組織に関する研究は、International Journal of Molecular Sciences (インパクトファクター3.7)に掲載された。いずれも国際共著論文であり、国際共同研究が順調に展開し論文掲載に至っていることから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
構築した血管構造を有する肝組織が機能することを示すには、生体外における機能評価だけではなく、実験動物に直接血管吻合して移植し、血流を確保しながら機能評価をする必要がある。これまでに生体外での実験において、送液可能な血管構造が作製可能であること、さらにそこから毛細血管網が伸長してお互いにつながることを示してきたことから、この作製したデバイスを生体に移植可能であるかどうか、肝機能の発現がみられるかを評価する。そして、作製した毛細血管に血流があるかどうかを赤血球の存在などから評価する。このとき、送液可能なサイズの血管構造において血圧に耐えられない場合は、平滑筋層を組み込んだ血管様構造を利用する。また、骨組織形成に利用したのと同様の手法を用いて、多孔質スキャッフォルドを利用することで、組織体全体の力学的強度を高める工夫を施す。これらにより、作製した血管構造を備えた組織が再生医療において有用であることを示す。また、オーストラリアとの共同研究では、血管網を備えた膵組織の構築に取り組んでいることから、同じ手法を膵組織へと展開する。また、血管と臓器細胞の自己組織化が現在用いている臍帯血由来の血管内皮細胞では生じにくい可能性がこれまでに見られていることから、iPS細胞由来の血管内皮細胞の利用についても検討する。
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