研究課題/領域番号 |
15KK0236
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 秀和 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80294130)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2017
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キーワード | 強相関電子系 / 遷移金属酸化物 / 金属‐絶縁体相転移 / ナノデバイス / ハイブリッドゲート / 電界効果トランジスタ / イオンドーピング |
研究実績の概要 |
本国際共同研究では、申請者が開発したナノスケール2端子酸化物ナノワイヤ型デバイスを、Beyond -CMOSとして重要な3端子ナノワイヤデバイス(電界効果トランジスタ)へと展開し、電界印加ナノ構造増感効果により巨大なSteep (急峻) Slopスイッチグを実現することを目的とする。 今年度は、研究代表者 田中がProf. Ramanathan研究室(Purdue大)に滞在し、2016年9月25日にPurdue大学に滞在を開始し、共同研究を推進し以下の成果を得た。 ■高温で金属―絶縁体転移を発現するEuNiO3、SmNiO3薄膜の合成を行い、および日本より送付した。TiO2(001)基板上に作成された室温で急峻な相転移を示すVO2エピタキシャル薄膜に対し水素ドーピング、Liドーピングによる相転移制御を行った。この結果、EuNiO3、SmNiO3薄膜においては、水素ドーピング、Liドーピングが可能であり5~6桁に及ぶ抵抗上昇が見られることを明らかにした。VO2エピタキシャル薄膜においては、従来の報告を異なる水素ドーピングにより急激な抵抗上昇(4桁)を生じることを見出した。一方Liのドーピングは困難であった。 ■Purdue大で作成されたEuNiO3、SmNiO3薄膜を大阪大学田中研究室へ送付し、フォトリソグラフィーによるマイクロパターンデバイスを形成し、再度Purdue大にて水素ドーピングを行い、位置制御ドーピングに成功した。また電界印加により不揮発性メモリ動作を確認した。 ■Applied Physics Letter-Material (APL-Material) において、Prof. Ramanathanがエディターを務める special topic issue on “Iontronics” へ招待論文を発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画において、3端子デバイス形成にあたりゲート層として、強力な電界を印加可能でありながらもフレキシブルな液体ゲートを利用することを想定していた。共同研究者のRamanathan教授とのディスカッションにより、より一層巨大な変化を引き起すことが可能な水素ドーピング、Liドーピングを介した強相関酸化物へ電子ドーピングを試みることとした。この結果、【研究実績の概要】に示すように5~6桁に及ぶ抵抗上昇を観測した。また水素ドーピングは温度・Pt触媒を利用し電界制御では無い点は電子デバイスとしては不適格であるが、一旦、試料中にドーピングされた水素は電界で容易に制御することが可能であり、実際にまた電界印加による不揮発性メモリ動作を確認し、3端子電界効果トランジスタデバイスに非常に有効なデータを得ることが出来た。このように新しい展開(水素イオンゲ―ティング)により一層の高性能デバイス創製の知見が得られ。また滞在先のSchool of Materials Engineeringのみならず、Purdue大学の全額組織であるBirck Nanotechnology Centerにおいても研究を遂行し、多角的な研究ネットワーク形成を実現しつつあり、 当初の計画以上に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
水素による巨大な電子ドーピングが観測されたEuNiO3、SmNiO3薄膜、VO2エピタキシャル薄膜に対し、3端子ナノ構造デバイスを作製する。前年度までに水素ドーピングされた2端子デバイス試料に対して電界印加により不揮発性メモリ動作を確認している。3端子デバイスにおいてゲーティングによる電気伝導変調を行う。さらにマイクロサイズデバイスを、ナノインプリントリソグラフィーにおりナノスケールへと展開し、その一層の性能向上(変調率の構造、スイッチングスピードの向上)目指す。 また継続的な国際ネットワークを構築し、研究の展開を図るため、Purdue大School of Materials Engineering およびBirck Nanotechnology Centerと学術交流協定締結を進める。また産業科学研究所に、Purdue大との連携ラボの設置を進める。
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