セメント系―地盤材料の多重人工バリアに関する構造分析と数値解析手法の構築を目的に研究を行った. まず,実験による詳細分析として,PSI(ポールシェラー研究所)のSINQ(スイス核破砕中性子源施設)が所有する加速器中性子源施設を用い,低温中性子(cold neutron)を用いた画像解析による多孔体中の物質移動解析を実施した.セメントとベントナイトを接触させて1年程度が経過した複合供試体を用い,セメント側から重水を浸透させ,拡散挙動を経時的に観察した.炭酸ナトリウム無混合のベントナイトでは界面を超えた拡散現象が観察されたが,炭酸ナトリウムをベントナイトに事前混合したものにおいては,セメントとの境界において拡散現象が止まることが明確に観察された. 次に,前年度に続いてトリチウム水の拡散試験を行い,セメントペーストおよびベントナイトを接触させた複合供試体の拡散挙動を分析した.前年度は接触直後の拡散性状を評価したが,その測定結果の見直しを行うとともに,およそ1年が経過した試料を用いて検討を行った.この結果,拡散係数は半分程度に減少し,濃度が高い場合にはより早期に影響が現れることが確認された. 最後に,数値解析による検討として,地球化学モデルGEMS-PSIと物質移動解析モデルOpenGeoSysを組み合わせた,連成解析プログラムOpenGeoSys-GEMSを基盤技術とした検討を行った. 一部の成果はすでに論文投稿するとともに,残りの成果については,追加的な分析を行ったうえで論文投稿を行うこととしている.
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