研究課題
現在福島第一原発の廃炉活動が進められているが、その廃炉工程には高放射線環境での作業が必要であり、ロボット等の投入による速やかな廃炉活動が求められている。しかし通常ロボットの頭脳であるSi半導体集積回路は、放射線耐性が低く、高い放射線環境下では破損する。本研究「ワイドバンドギャップSiC半導体による放射線耐性に優れたCMOS集積回路の研究」では、4H-SiC半導体による放射線耐性に優れたCMOS集積回路の研究を行い、廃炉工程に関わるロボット群の頭脳を構築することを目標としている。本研究は、国際共同研究としてスウェーデン王立工科大学(KTH Royal Institute of Technology)のProf. Carl-Mikael Zetterlingらと進めている。本研究では4H-SiC nMOSFETsを試作し、既に1MGyを超えるガンマ線照射時の動作特性への影響や450℃までの超高温動作特性等を示している。平成28年度はこれを更に発展させ4H-SiC半導体によるMOSFETsデバイスの高性能化、および小規模集積回路の研究および試作を進めた。特に4H-SiC 集積回路の構築、特にn型トランジスタのみで論理インバータ動作可能なPseudo-CMOS回路の極限環境動作を示し、4H-SiC MOSFETsの電流駆動力向上のためにキャリア移動度向上および短チャネル化を行った。従来のプレーナ型4H-SiC MOSFETsではSiC特有の高温プロセスからの制限より、従来のゲート電極等を用いたセルフアライン構造を適用できない。このため回路の高周波動作が難しい状況であった。本研究では新しいデバイス構造を提案し、MOSFETsへの寄生容量を極限まで低減を行い、高周波動作への道筋を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成28年度はこれまでの研究を更に発展させ4H-SiC半導体によるMOSFETsデバイスの高性能化、および小規模集積回路の研究および試作を進めた。特に4H-SiC Pseudo-CMOS回路の450℃までの極限環境動作を示し、またバリウムなどの異種元素をMOS(酸化膜-SiC)界面に導入することでキャリア移動度向上を行い、また従来のプレーナ型MOSFETs構造からゲート埋込構造を導入することでトランジスタの短チャネル化を行い、高い電流行動能力を示した。平成29年度はこの異種元素導入および新構造を用いた4H-SiC集積回路構築を進めるとともに、ガンマ線照射効果など実験を進め、シリコンカーバイドMOSFETsによる極限環境エレクトロニクスを構築する。
引き続き研究をスウェーデン王立工科大学との国際共同研究として進める。スウェーデン王立工科大学ではシリコンカーバイド・バイポーラトランジスタ等によるデバイスおよび回路研究が進められており、本研究代表者も一部参画している。連携して研究を進めることで、実用化に向けた技術確立を早急に行い、より人・社会の役に立つ、人が立ち入れない環境、すなわち高放射線、高温どの極限環境で駆動する集積回路・センサーシステムを構築する。スウェーデンと日本という、平和を希求する国間の国際共同研究であり、より未来を見据えた研究を進め、またストックホルム・広島という地から、この研究を発信する。シリコンカーバイドによる極限環境用集積回路の構築と共に、同じく極限環境でも動作可能なセンサー群の構築が求められる。これらセンサー群に関しては、発展的に別プロジェクトとして研究を進めている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Mat. Sci. Forum
巻: 897 ページ: 669-672
https://www.sci enti fi c.net/MSF.897.669
巻: 897 ページ: 399-402
https://www.sci enti fi c.net/MSF.897.399
巻: 897 ページ: 348-351
https://www.sci enti fi c.net/MSF.897.348
IEEE Transactions on Nuclear Science
巻: 64 ページ: 852-858
10.1109/TNS.2016.2642899
Applied Physics Letters
巻: 109 ページ: 012101-1-5
10.1063/1.4955406
ECS Journal of Solid State Science and Technology
巻: 5 ページ: 457-460
10.1149/2.0091609