研究課題
本研究は,二酸化炭素の水和速度を著しく増大させる炭酸脱水酵素を担体に固定化して,実用的な反応系を構築することを目的としている。最終年度は前年度までに得た樹状高分子鎖上に酵素を精密に結合させる手法と流通式反応への応用に関する知見を発展させるために,脂質二リ分子膜小胞(リポソーム)表面へ従来法とは異なる結合様式に基づいて酵素を複合化する手法及び炭酸脱水酵素と他の酵素を組合わせた逐次酵素反応系の構築について検討した。リポソームを2種のリンカー分子により修飾する際のリポソーム膜の組成,調製条件,反応条件及び修飾リポソームの精製法について検討して,炭酸脱水酵素の複合化に向けた有用な知見が得られた。さらに,従来法で調製したリポソーム-炭酸脱水酵素複合体を用いて,種々の濃度の二酸化炭素を含む溶液から炭酸カルシウム微粒子を生成させる条件について,マイクロプレートリーダを用いて速度論的・網羅的に検討した。逐次酵素反応系への展開については樹状高分子鎖上に結合させた炭酸脱水酵素と遊離酵素を用いて基礎的知見を蓄積した。研究期間全体では,樹状高分子とリポソームを利用した固定化炭酸脱水酵素の調製と応用を検討した。まず,樹状高分子と炭酸脱水酵素を吸光度により定量可能な結合を介して複合化・精製する手法を確立した。次に,これをガラス製のピペット内壁またはグラスファイバーフィルターに静電的に結合させ,これらを用いた流通式反応系を構築した。一方,リポソーム表面に炭酸脱水酵素を共有結合により高密度に複合化して,気泡塔を用いた炭酸カルシウム微粒子を生成させるための触媒として応用した。また,アビジンを結合させたリポソームを足場として逐次酵素反応場を形成させた。以上は,樹状高分子やリポソームに炭酸脱水酵素を複合化した触媒を実用的な流通式反応プロセスや炭酸カルシウム微粒子生成反応へ応用できることを示している。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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