研究課題/領域番号 |
15KK0243
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
阪本 卓也 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (30432412)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | レーダ / 人体 / 心拍 |
研究実績の概要 |
当該年度には、心拍の遠隔測定精度が体動により劣化する影響を抑圧するための信号処理技術を開発し、その性能を実験的に検証した。まず、昨年度に開発したマルチチャネルレーダおよび適応的アレイ信号手法の改良を行った。複数の人体が存在する場合でも測定対象の人体方向にビームを向けつつ、測定対象でない不要波を抑圧することにより、特定個人の心拍測定を実現する技術を開発した。今年度の改良により、レーダ近傍に存在する複数人体が運動中であっても不要波抑圧のための角度幅を適応的に変化させることにより、不要波のほぼ完全な抑圧を実現した。さらに、対象者の運動により生じるドップラー偏移の特徴を畳み込みニューラルネットワークにより自動識別することで、運動の種類や性質を推定する技術を開発した。推定された体動の影響を抑圧し、非接触心拍測定の精度を改善する手法を開発した。以上の技術開発により、研究計画に記載の目的のうち体動が比較的小さい場合については高精度な非接触心拍測定を可能にする信号処理法が実現された。 開発技術の性能評価のために、2名の被験者をレーダにより測定する実験を実施した。各被験者の中心位置の間は60cmと近接した状態で両名とも直立した状態で1分間の測定を行った。この間、バランス維持のために両被験者の上体には約10cm程度の無意識の不規則な運動が見られた。両被験者の正面に4素子アレーアンテナを配置し、マルチチャネルレーダによる測定を実施した。測定データにアダプティブアレイ信号処理を適用することで、両被験者のうちで特定の人体からの反射波のみを適応的に取得することに成功した。特定の人体からの反射波に研究代表者が開発してきた高精度心拍推定技術を適用した結果、複数波が干渉する環境であっても高精度・非接触で心拍測定を実現する技術が実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度中には渡航先での国際共同研究により研究計画に記載の研究を実施した。研究計画に記載の内容のうち体動が大きい場合の非接触心拍測定については依然として十分な精度が得られていないが、体動が比較的小さい場合については高精度な心拍測定が可能となった。このため、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、体動が大きい場合にも適用できる高精度な非接触心拍測定技術を開発する。まず、人体表面からの反射波の性質を調べるため、距離カメラによる高精度の3次元人体形状測定を実施し、電磁界散乱解析により詳細に解析を進める。その結果を元にソフトウェア・ハードウェアの双方の改良により人体の姿勢や動きに起因する反射波の干渉や位相回転を補正する技術を開発する。特にソフトウェアについては機械学習とアダプティブアレイ信号処理を併用して体動検出の高精度化を図る。検出された体動の影響を抑圧することで心拍推定を高精度化し、本研究課題の最終目標を達成する。
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