トムソン散乱計測は、レーザー光をプラズマに入射することによって発生するトムソン散乱光を利用したプラズマ電子温度・電子密度の確立された計測手法である。しかしながら、装置を構成する高出力パルスレーザーの発熱による繰り返しの制限により、測定時間分解能が最大10ミリ秒間隔程度に制限されている。この問題に対して申請者らは、2016年度から2019年度まで、「国際共同研究強化(A):高速トムソン散乱計測による過渡的プラズマ物理現象の解明」によってプリンストンプラズマ物理研究所、ウィスコンシン大学等と共同で、レーザーの繰り返しを30倍以上することが可能な「バーストレーザー」を開発することによって、トムソン散乱計測装置の画期的な時間分解能の向上に成功した。これはレーザー媒質で発生する熱によって媒質内に温度勾配ができる時間スケールより短い時間でレーザー増幅することによって、熱の影響を排除した高繰り返しレーザー動作を達成したことによる。従来の計測では、30Hz程度に制限されていた電子温度・密度の測定時間分解能が、本研究によって1kHz以上までに向上した。現在、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置で実際のプラズマ実験で測定が行われており、固体水素ペレットの溶発現象のような極めて速い時間スケールで変化するプラズマの計測に用いられている。国際的な共同研究チームによって、確立した高時間分解能を持つ計測装置を用いた過渡的なプラズマ物理現象の解明が期待される。
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