研究課題/領域番号 |
15KK0246
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
荏原 充宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA准主任研究者 (10452393)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2018
|
キーワード | 早期診断 / バイオマーカー / スマートポリマー |
研究実績の概要 |
本研究では、イムノクロマト法などの簡便なポイント・オブ・ケア(POC)検査を用いての検出が難しいpg/mLオーダーのバイオマーカーの検出を目指すため、新たな診断システムの開発を行う。平成28年度は、その基盤材料である新規刺激応答性ポリマーの設計を行った。まず、シクロオクチンを側鎖に有する新規モノマーの合成を行った。得られたモノマーを用いて温度応答性ポリマーを合成した(Cyclooctynized polymer)。次に、アジド化した抗体(Azido-IgG)を作製した。得られたCyclooctynized polymer とAzido-IgG をクリック反応により結合した。この反応は他のトリアゾール環を形成させるクリック反応とは異なり、金属触媒を必要とせず、シュタウディンガー反応よりも100 倍以上も反応効率が良いことが知られている。すなわち、シクロオクチンを側鎖に有する温度応答性ポリマーを用いることで、汚染水や夾雑物存在下でもアジド化抗体との反応が進むものと期待できる。実際にクリック反応を、尿、唾液、血液中などで行った結果、すべての条件においてクリック反応が進行することが確認できた。さらに、目的病原体であるHIV のバイオマーカーを捕捉した後、体温付近に加温することによってバイオマーカーの凝集・沈殿させることにも成功している。この条件を基に、平成29年年3月27日~4月6日までUniv.Washingtonの協力者のStayton教授の研究室にて、ラテラルフロー用のニトロセルロース膜上における温度応答性ポリマーとの反応を試み、膜上にポリマーの凝集が確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、前述した目的を達成するために、温度応答性ポリマーと抗体との複合体を作製し、それを用いて目的バイオマーカーの分離・濃縮・検出を行う。平成28年度までにシクロオクチン化温度応答性ポリマーを合成し、アジド化抗体との反応効率の検討を行ってきた。具体的には、ポリマー濃度、反応温度、不純物の影響などを検討してきた。得られた最適条件を基にして、平成29年年2月よりp24抗体の効率的な分離・濃縮を詳細に検討した。の条件を基に、平成29年年3月27日~4月6日までUniv.Washingtonの協力者のStayton教授の研究室にて、ラテラルフロー用のニトロセルロース膜上における温度応答性ポリマーとの反応を試み、膜上にポリマーの凝集が確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
得られた結果から反応条件を再度最適化し、平成29年5月13日~22日まで渡米しラテラルフローの流速とポリマー溶液の粘度の最適化を行う。次にバイオマーカーの検出のために、平成29年6月12日~25日まで渡米し、金コロイドに温度応答性ポリマーの末端に反応させておく。また酵素基質反応を用いた検出方法に関しては、平成29年7月22日~8月20日に渡米し、ポリマーの末端に酵素を反応させる。得られた技術を融合し、平成29年11月27日~12月10日と平成29年12月23日~平成30年1月12日にそれぞれ渡米しバイオマーカーの検出を試みる。これらの結果を踏まえて、国際特許出願や論文の作成などの打ち合わせ、共同シンポジウムの開催などを目的とし、平成30年2月19日~3月15日まで渡米する。また、この段階においてシアトルに拠点を置くNPO法人PATHと打ち合わせを行い、抗HIV-1抗体、抗p24抗体、抗PfHRP2抗体の提供を受けるとともに、実用化レベルに近いシステムの検討を行う。この際、使用するポリマーの物性の最終微調整を行うため、平成30年4月2日~20日および平成30年5月7日~30日にそれぞれ渡米し、新たな温度応答性ポリマーと抗体との複合体を作製する。これらを用いた試験とプロジェクトのまとめのため、平成30年7月23日~8月19日に渡米し、目標に掲げた数値の実現と実用化のためのポートフォリオのディスカッションを行う。プロジェクト期間では、2週に1度のStayton教授とテレビ会議にて意見交換を行う。
|