世界70億人のうち、1/2は衛生面で問題を抱え、1/3は電気が使えず、1/5はまともな水が飲めない環境で生活しているといわれている。こうした地域では、毎年1000万人以上が5歳まで生きられずに死亡しており、その死因の半分以上がepidemics(マラリア、結核、インフルエンザなどの疫病)である。通常、感染後最初に見つかるのがRNA、次にp24などの抗原、次にIgM型抗体、そして最後がIgG型抗体であるが、これらの血中濃度は感染初期では特に低く、例えば炎症性サイトカインの場合、pg/mLオーダーである。高の数値は、イムノクロマト法などの簡便なポイント・オブ・ケア(POC)検査を用いての検出は難しい。そこで本研究では、①特殊な環境下でも駆動し(摩擦熱や太陽光)、②利用者の手技によらず誰でも簡便に使用でき(唾液や尿をかけるだけ)、③短時間・低コストで診断結果が得られる(1ドル以下、20分以内)診断技術の創生を目指す。このような条件を満たす方法で血中微量バイオマーカーを早期検出するため、POCで検出可能なng~ug/mLレベルまでバイオマーカー自体を濃縮させるという着想に至った。しかも温度や光といった汎用なエネルギーによって機能制御可能な環境応答性ポリマーを用いることで、低インフラ地域でも微量バイオマーカーの濃縮が可能ではないかと考えた。本国際共同研究プロジェクトを通じて、日本側で作製したポリマーおよび検査キットを用いて、米国側から提供されたバイオマーカーとの複合化および濃縮精製を行った。その結果、わずか一回の熱沈殿によって診断シグナルを約100倍増幅することに成功した。
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