研究課題
前年度に収集したクライオ電子顕微鏡のデータを用いて精密構造解析を行った.得られた電子密度に,結晶構造解析で得られたFunctional Unitの原子構造をリジッドボティーフィッティングによりあてはめ,10量体の全体構造の原子モデルを構築した.また,各 Functional UnitのN末端,C末端の位置と,それらを連結するリンカーの長さを考慮して,それぞれのプロトマーにおけるFunctional Unitのトレースを明らかにした.10個のプロトマーのFunctional Unitの相対配置は,4つのグループに分類されることがわかった.内部に存在するFunctional Unit-d*と-gは主に2つの位置に存在することができ,それらの組み合わせによって4種類のコンフォメーションが存在する.過去に報告されたX線結晶構造解析による構造モデルと比較し,内部領域の正確な構造を明らかにした.外壁領域はこれまでに報告のあるヘモシアニンと類似したD5対称の同様の構造であったが,内部構造は,これまでの構造とは大きく異なる配置をしていた.過去のX線結晶構造解析により得られた構造の問題点と,そのような構造が得られた原因についても考察した.明らかになったクライオ電子顕微鏡の構造からは,分子進化の様式が明らかになった.腹側類からタコなどの頭足類を経由して,イカなどの頭足類へと進化する過程で,Functional Unit-d*の遺伝子重複が起こり,それにより,ドメインスワップによる多量体が解離し,再会合する過程で内部ドメインの再配置が起こり,複雑な形状の内部ドメインへと変化したことが示唆された.現在,さらに高分解能の電子密度が得られるよう,最新のプログラムを用いて構造精密化計算を行っている.
3: やや遅れている
構造計算に予想していた以上の時間がかかったため.
現在,最新のプログラムにて構造精密化の計算を実施している.最新のプログラムは,前年度に使用してたものに比べ,10倍以上の計算処理速度になっており,構造解析が終了する予定である.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
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