研究実績の概要 |
近年、医療応用の観点からミトコンドリアリボソームの機能構造相関を解明する必要性が高まっている。本研究課題では、ミトコンドリアのリボソーム構造動態を網羅的に理解することを目指し、様々な翻訳伸長リボソーム複合体のCryoEM構造解析に取り組んでいる。 EF-G2mtは申請者自身が見いだした哺乳類ミトコンドリアのリボソームリサイクリングを担う新規の翻訳因子である(Tsuboi et al., 2009)。バクテリアでは、翻訳伸長過程におけるトランスロケーション反応とリボソームリサイクリング過程におけるリボソーム解離反応をEF-Gが担うが、ミトコンドリアではそれらを異なる2つの因子(EF-G1mtおよび EF-G2mt)が分担している。今回申請者は渡航先にて、2つのリボソームリサイクリング複合体(PRE-recycling complex, mtRRF/55S; POST-recycling complex, mtRRF/mtEF-G2・GDPNP/39S)について構造を決定した。分解能はそれぞれ4.0オングストローム、 4.1オングストロームであった。ミトコンドリアのリボソームリサイクリングの分子機構の詳細が明らかになるとともに、リサイクリングとトランスロケーションにおけるEF-G の作用機序の違い、リサイクリングにおけるEF-GによるGTP加水分解の役割、について知見が得られた。これまでにミトコンドリアリボソーム単体の構造について報告があるが、ミトコンドリアリボソームと翻訳因子の複合体について世界ではじめての報告となる。
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