研究課題/領域番号 |
15KK0254
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
末次 憲之 京都大学, 生命科学研究科, 研究員 (60514156)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | フォトトロピン |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナにおいて青色光受容体フォトトロピンに結合し、光屈性と葉の展開を制御するNRLタンパク質NPH3 は細胞膜局在タンパク質であり、暗黒下でリン酸化され、青色光でフォトトロピン依存で脱リン酸化し一部が細胞膜から粒状の構造へ局在変化することが知られている。この青色光依存のリン酸化状態の変化に伴った局在変化は、GFPタンパク質をN末端側に結合したGFP-NPH3で観察されたものであるが、これまで申請者が用いてきたNPH3-GFP ではGFP-NPH3 で観察されたリン酸化状態や局在の光制御は確認されず、光条件にかかわらず、常にリン酸化された状態であり細胞膜状に局在し、マイクロドメイン様の粒状の構造が確認された。それでもなお、NPH3-GFP はnph3 変異体における光屈性の異常を部分的ではあるが相補した。これらの結果から、C末端側のタグはNPH3の青色光依存の脱リン酸化と局在変化を阻害するが、これらの現象の光制御はNPH3 の機能に絶対的に必要ではないことがわかった。GFP-NPH3の局在や結合タンパク質のさらなる解析は共同研究先のChristie教授の研究員が担当する。 以前同定したフォトトロピン依存の葉緑体運動を制御するNRLタンパク質NCH1の解析から、NCH1 もNPH3 同様のリン酸化状態のフォトトロピン依存の光制御を示すことがわかった。このリン酸化制御はシロイヌナズナNCH1 だけでなく、ゼニゴケのMpNCH1 でも起きることがわかった。ゼニゴケMpNCH1 のリン酸化サイトの解析の結果、MpNCH1 のリン酸化が葉緑体運動に必須であることがわかった。現在シロイヌナズナのCitrine-NCH1 のリン酸化サイトと結合タンパク質の同定に向けて、予備実験を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初3つのNRLタンパク質NPH3、RPT2、NCH1 の解析を全て担当する予定であったが、NPH3 に関しては共同研究先のChristie 教授が担当することになり、特に申請者の興味である葉緑体運動に関わるRPT2 とNCH1 に集中することにした。シロイヌナズナとゼニゴケ両方でNCH1 の光依存のリン酸化制御を発見したが、これはフォトトロピンによるNRLタンパク質の光制御がオーキシン依存の光屈性や葉の展開だけでなく、細胞自律的な葉緑体運動にも関わることを示し、さらには陸上植物で保存された制御であることが示された。RPT2やNCH1 の結合タンパク質の解析、NCH1 のリン酸化のさらなる解析は、Christie教授のNPH3 の解析とともに相乗的に研究が進むことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまで申請者はC末端側にGFP を結合したNRLタンパク質を解析してきたが、NPH3 とNCH1 ともにC末端側GFPが光依存のリン酸化制御を阻害することを見出した。現在はN末端側に Citrine を結合させたRPT2とNCH1 を用いて解析しており、これらのタンパク質は内在のRPT2とNCH1同様に機能することがわかったので、Citrine-RPT2とCitrine-NCH1 を局在解析やマス解析に使用する。共同研究先のChristie 教授がNPH3に関して担当し、申請者がRPT2 とNCH1 を担当することによって、時間と労力の削減とともに共同研究の意義もより深まった。協力して3つのNRLタンパク質NPH3、RPT2、NCH1 の局在解析や結合タンパク質のマス解析を進めることで、マイクロドメイン様構造におけるフォトトロピンシグナリングの一端が解明されると期待される。
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