研究課題
研究代表者はこれまでに,脊髄に存在するガストリン放出ペプチド(GRP)系は雄優位な性的二型を示し,雄の性機能を脊髄レベルで制御することを報告してきた。本研究では,この新規に見出した性機能を司る回路システムと脳との機能的・器質的結びつきについて解析する。特に,脳が合成する下垂体後葉ホルモンのひとつ,オキシトシンの脊髄における作用に着目した解析を進める。その過程で中枢神経系において「ペプチド性シグナル分子の作用部位がシナプス構造に必ずしも限局する必要がない」,という興味深い現象を明らかにしつつある。そこで本研究では国際共同研究を広く展開し,シナプスを介さない従来とは全く異なる極めて独創的な概念:ニューロン-ニューロン間コミュニケーションにおいて,シナプスを介さず傍分泌的に作用するという革新的な生命原理 volume transmission機構を解明することを目的としている。英国オックスフォード大学John F. Morris教授が既に脳ニューロンおよび下垂体後葉において確立している「エキソサイトーシス誘発実験技法」を脊髄に応用することを試みる。基本的な手法は共通であると予想されるものの、急性脊髄スライスの作製、および免疫電顕の条件決めなどの細部に関する予備実験を必要とする。これらの予備的な解析は国内で予め行い、渡航後の研究進展の効率化を図る。平成28年度は,研究代表者が約1ヶ月間オックスフォードへ滞在し,John F. Morris 教授のご指導の下,エキソサイトーシスの立体的な電顕解析に関する予備的解析を行った。この立体的な解析により,神経系のヘテロな超微形態(開口分泌の瞬間、場、タイミングなど)をミリメーター・スケールでの定量解析が可能になる。
2: おおむね順調に進展している
オックスフォード大学にて,立体的な電顕解析の予備解析を実施した結果,オキシトシンのエキソサイトーシスを効率良く解析できる手法を確立することに成功した。今後,本格的な立体定量解析の実施を開始する予定である。以上の成果から、研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価する。
28年度のオックスフォード大学における予備解析が良好であったので,29年度夏期もオックスフォード大学で引き続き国際共同研究を推進することにより,飛躍的な研究発展が見込めると判断した。当初の予定では,今夏はエモリー大学へ2ヶ月程度渡航する予定であったが,そのうち1ヶ月をオックスフォード大学への渡航へと変更して,本格的な定量解析へ着手したい。従って,7月―8月(のうち1ヶ月程度)はオックスフォード大学,8月―9月(のうち1ヶ月程度)をエモリー大学への渡航予定への変更を希望する。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Journal of Comparative Neurology
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Biological Psychiatry
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http://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/ushi.htm