タンパク質の過剰発現は細胞の機能に様々な悪影響を引き起こすことが知られているが、そのメカニズムはほとんどわかっていない。本研究では、出芽酵母をモデルとして、化学量不均衡などのタンパク質の過剰が引き起こす不利益を回避するメカニズムを体系的に調査することから、タンパク質の過剰が引き起こす現象の理解を目指した。そのために本研究では特に出芽酵母遺伝子の大規模解析に実績のある2つの研究室に滞在し、大規模スクリーニングの技術とデータを集積した。2016年度と2018年度に滞在したトロント大学では、体系的な遺伝子破壊株のプロファインリング技術(Synthetic Genetic Array)を用いて過剰発現による増殖阻害が亢進したり回避されたりする一連の変異株を取得した。その変異株の特性から過剰発現による増殖阻害がどのように回避されるかを考察した論文を現在投稿準備中である。2017年に滞在したハイデルベルク大学では、遺伝子の過剰発現が増殖に有利に働く遺伝子群を体系的に取得する新たな方法の開発を行った。実験法は帰国後さらに改良を加え集積したデータの解析を現在進めている。
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